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「心と身体が、一番好きな事やっちるちゅうことを、自然にわかってるみたいやね。」
約束の時間に少しだけ遅れて来たシーナと鮎川誠。
二人の出現により、インタビューを行なう、そのテーブルが一瞬にして
華やかな場所と変わる。
シナロケ結成から12年。すでにRock`n Rollの大御所の粋に達する二人。
目の前に現れた二人の姿は、キャリアとメンタル面のピュアな部分は正比例するということを教えてくれた。
【BERO】 昨日のコンサート、お疲れ様でした。福岡ということで、他の会場とは違った盛り上がりだったのでは
ないですか?
【鮎川】 都会だけでなく山の中の田舎に行ったり、種子島に飛んだりしとるんやけど、他から見ると
ちょっとよそよそしい部分を感じたね。特別思い入れが強かったからね。「腹いっぱいみんなに聴いてほしい」「ええかっこしよる
シナロケを全部見てほしい」と思って何か力んだかもしれん…、俺達のほうが。10年選手のバンドが新人バンド
みたいに。
【BERO】 福岡は久しぶりでしたね。
【BERO】 パーカッションとキーボードが参加しているせいか、音に厚みがあり凄く聴きごたえがありました。
【鮎川】 先日、日比谷野外音楽堂で『DREAM & REVOLT』の発売パーティをやったんだ。
そのときにゲストミュージシャンとしてキーボードの中山君と"TAHI"ち書くっちゃけどタヒちいうパーカッションを入れて、そのまま大阪・名古屋・福岡と同じサウンドになったんだ。
【BERO】 インストゥルメンタルの部分が多かったように感じますが、キーボードとパーカッションの参加のせい?
【鮎川】 あまり意図はないし、メンバーが入ったからという訳でもないね。あれは、全然気まぐれな選曲。
あんまり根拠はない。いきなり歌い出すやつが多いんだけど、本当にちょっとした気まぐれで。
ハッピーハウスの『THE SPY』、それからデビューしたときからずっと演ってる『BATMAN』、昨年NewYorkで
レコーディングしたけどレコードには入れんかった『ピーターガン』というお得意のところを小手調べにやったっちゃけど、気に入ってもらえたらうれしい。
【BERO】 今回の『DREAM & REVOLT』のジャケット写真にシーナの素顔がデザインされていますが…。
【シーナ】 この写真を撮ったカメラマンはBob Gruenという人なのね。私、彼のこと「ROCKの使者」って
呼んでるんだけど…。知り合ったのは12年前で、彼とは大親友なの。
NewYorkで録音した『HAPPY HOUSE』のLPのときも彼が撮ってくれたのよ。そのときはレコーディング・コーディネーター
もやってくれたわ。スタジオやロフトまで全て見つけてくれたのよ。
彼はジョン・レノンの写真をずっと撮ってた人で、最近はキース・リチャーズの写真集を出したりもしてる。そう、あれね。
で、今回スタジオに入ったとき、彼が「まず、1枚撮ろう」と言って素顔を撮ったわけ。そのあと、いろいろパターン
を撮ってみたんだけど…。
【鮎川】 俺達、自分たちでガチャガチャやるんですよ。ジャケットあれにしよう…、これにしよう、って言いながら。
【シーナ】 私たちのコンセプトっていうのは、いつも「行きあたりばったり」。ライブ感覚という意味でね。で、これに決まったというわけ。普通はLPができてからインスピレーションで決めちゃうんだけど、今回ちょっと違ってたのはコンセプトが最初に決まってたということ。
それから撮影をやったので、「そうしなくちゃいけない」みたいなものに縛られそうになったけど、結果うまくいったと思うわ。
【BERO】 LPのタイトルも先に決まってたのですか?
【シーナ】 今回のアルバムは制作プロデューサーを一人の作詞家がやったのね。サンハウスのボーカル、柴山さんね。で、最初からLPのタイトルも、11曲分の詞も彼は作ってたの。何もかも1冊
の本のように出来上がってたわけ。「はい」って言って手を上げて、「僕が全部やったよ」って言った人が
勝ちよね。
【BERO】 ところで、シナロケの曲はどうやって作られていくのですか?
【鮎川】 曲の作り方ちゅうのは、いろんなのがあるやろうけど、僕たちの場合は柴山さんや他の作詞家の人たちが書いたのがいっぱいたまってるのを、こんな曲やろう、あんな曲やろうと言って、とっかえひっかえやるっちゃけど…。
まぁ、曲を作るちゅうのは、凄い、いいかげんな作り方です(笑)。
机の隅から、ものすごく昔の詞が出てきたときに、昔は感じなかったものを感じたりするわけ…。そしたら、「これ使いたい」とか思って曲つけたりもするし…。
これからも同じやろうと思うけど、でも、今回だけはちょっと違ってた。柴山さんからシナロケのいい所を引き出すというコンセプトで、テーマ・詞・曲順まで決定したやつをロケットで作って欲しいという提案があってね。
柴山さんと最初話をしたときに、えらい盛り上がって共同プロデューサーとしても参加してもらうことになったわけ。
柴山さんがシナロケを外から見て、「ああしたい」「こうしたい」みたいな。今までとは違った作品ができるんじゃないかなぁ。で、それも面白いねって、なったわけ。
でもシーナは最初嫌がってたね。最初から枠が出来上がってるってのはシナロケみたいなバンドにはちょっとプレッシャーがあると感じたみたいやね。
でも、やればできるもので…。
【シーナ】 反対に決まってしまえば、「じゃあ、やってやろうじゃないの」ってね。柴山さんの要求に応えるために私だったらどうするかしら…みたいな。
トライしたい、チャレンジしたいという気分が出てきたのね。
【BERO】 それ凄く伝わってきます! 各曲の表現が違って、シーナって歌がうまいなぁって改めて思いました(笑)。
【鮎川】 そうだね。僕たちはロックンドリームとか、気分とか、生き方とか、形にならない物にピンとくるものがあったりして、
手当たり次第に曲を作るけれども、今回はハッキリしたテーマだったわけ。で、そのテーマちゅうもんで、一応スジ通そうや…って。
最初は、わざわざこんなことまで歌わんでいいやって感じたりしたけれども、音がついて歌になってシーナが歌ったときに、すごい別もんに蘇ったり、
生き返ったり…。「ALMOST BLUE」みたいな暗くて寂しい歌でも、…シナロケには合わんなと思っても、逆にすごいマッチしたり。
いい結果がいっぱい出たと思います。
【BERO】 大好きなアルバムになりそうです。
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