コメディが笑えてもめずらしくないが、重いはずの映画が結構ツボにはまってしまうこともある。かの名物編集者関口さんが「作家がファンに無理矢理話を書かされる話で、他の漫画家も怖い怖いと言っていた。」というので、素直に「怖そう・・・」と思って見たこの映画、聞きしにまさるすげえ内容。
娯楽作家から足を洗いたいために主人公を殺しちまう作家、「よくも(主役を)殺したわね」と作家の足をハンマーでへし折り、無理矢理話を変えさせるファン、こじつけミエミエの展開で死んだ主役を生き返らせる作家、それを読んで狂喜乱舞するファン、タイプライターでファンの頭を叩き割り、原稿を口に突っ込んで「これがほしかったんだろう、食え!」という作家。
あまりの徹底描写に、思わず手を叩いて「がっはっは」と受けてしまった獸木は、決して不謹慎なのではありません。
「作品は人のためならず」。
この教訓を忘れた作家は、ミザリーみたいな頭のおかしな人にファンを名乗られても、文句は言えないのよ。作家志望の方、ぜひ一度観ておきましょう。
でもこの映画を観て、「ここに出てくるファンがすげえ美女だったら、どんな展開になってたんだろう?」と、ちょっと思ってしまった獸木は、まだまだ修業不足かも知れません。
インタビュー・ウィズ・バンパイア
獸木はブラピやデカプリを毛嫌いするタイプではありませんが、彼らを「美しい・・」「かっこいい」と感じるタイプでもありません。獸木がブラピに「ほ〜」と感心するのは、「12モンキーズ」で、目をあちゃこちゃにした、頭のおかしいお兄さんの演技がすごかったりするときだったりします。
そこで、ずんぐりな体形が気に入ってるトム・クルーズ兄ちゃんまでが、減量してお耽美路線になってるというこの映画は、ややナナメに構えて観はじめたのであった。
そのせいかどうか、「フランス料理(人)でも食いにいくか。」 「家の中で人を殺すなと何度言ったらわかるの?メッ!」(と子供吸血鬼の手をピシピシ)」といった、故郷の味のブラック・ギャグに妙にハマってしまい、この映画は獸木の中で「アダムス・ファミリー」と並ぶブラック・・ユーモア映画に分類されることに・・・
ちなみにこの映画のあとで「若草物語」を観てしまった獸木は、末っ子のエミリーがいつ一家惨殺に走るかとどきどきしてしまい、一粒で二度楽しませていただきました。
紅の豚
もちろんこの映画の全編を通して笑っていたわけではないが、2個所ほど、獸木の笑いのツボをヒットしたシーンがあった。
その1/「愛国債券などお求めになって民族に貢献されてみては?(とかなんとか)」と銀行の人かなんかにすすめられて、豚さんが一言
豚さん 「そおいうことは人間同士でやんな。」
獸木 「ぎゃはははは!」
その2/別のシーンで
豚さん 「ファシストになるよか豚でいたほうがマシさ。」
獸木 「ぐあっはっはっはっは!!」
そしてわたしは聞いた。自分の笑い声が映画館中に反響するのを。子供ばかりとはいえない満員の映画館。どちらのせりふでも、獸木意外の誰一人として笑わなかったのだ。
ついにPALMの政治ギャグに「笑いました」という読者のお便りの来たためしのない謎が解けた。
幼き日は口の達者なキャラばかりのイギリス童話、思春期は20世紀ブラック・ユーモリストのドン、ヴォネガット様なんかにどっぷりつかって育った獸木野生は、「紅の豚」を映画館で観るそのときまで、「日本人はブラック・ユーモアで笑わない」ということを知らなかったのだ(ちなみに他のふたつの映画はビデオで観ましてん)。
映画館でのフラストレーションは、上記の名場面を当時のお隣さんで同じく宮崎ファンのアメリカ人ケリーちゃんに語り聞かせて盛り上がることで解消しました。