●世界大戦と女性差別によって自国を追われ、戦争で混乱した世界を放浪する少女と犬のファンタジー。ベトナム戦争や第二次大戦、ユダヤ人虐殺で記憶される人種撲滅戦争などを思い起こさせる架空の戦争が、ランダムに展開する構成となっている。
獸木作品の中でももっとも暗く残酷なエピソードが続き、軍服や戦争兵器が占領する画面も果てしなく灰色なこの作品は、少女漫画っぽさからなるべく逸脱することを試みて書かれた作品でもある。
/★★★★
制作エピソード/
オーストラリア出国時の、「自分の体験や心境をなんとか作品にできないか」という思いと、自分なりに戦争を理解し解釈したいという長年の挑戦、このふたつの野望の結集として生まれた獸木野生最後の反戦ストーリーであるこの作品は、「いろいろあるが、とにかく犬だけは幸せになった」という結論で終わった。
それまでは自分にとってあまりに深刻すぎて、40になってからやっと作品の要素に取り入れることができるようになったフェミニズムもこの作品の大きなテーマのひとつだが、そういう作品ほどいつもより少女漫画っぽくないというのも、なんだか皮肉な話だ。
「架空の線」というタイトルは、息子を出産した直後に描かれた習作時代最後の投稿作品で、最初の反戦物の「架空の線」(「獸木野生の作り方」20代のサイト参照)から取ったもの。
Oct.2003
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