PALM  THE WORLD

<作  品> ジャンル/

人間ドラマ

動物ファンタジー
作品内時間/
20世紀の約100年間 昔々から未来まで
話数/
全10話予定 全約10話予定
形式/
大河物 短編オムニバス
長さ/
大長編 ごく普通の長編
難易度/
むずい カンタン
構想/
作者14歳からのライフワーク ながら構想・短編消化用
   
<キャラクター> 人数/
団体戦 二匹狼
性格/
悪いと言われつつもいい人 めっちゃ悪い
人間関係/
団結強く暖かい信頼関係 自分勝手で冷たい関係
衣装/
黒ずくめ 白ずくめ・他色々
コンビ漫才/
カーター&ジェームス BW&WW
恋愛/
純愛路線 ハーレム状態
対象読者層/
日本アジア限定・世紀間対応 世界対応・任意時代対応



 短編混在型・普通サイズ長編オムニバス
構想執筆が全50年に及ぶと予想されるPALMは、全10話、一話最大2000超ページ のモンスター長編。対するTHE WORLDは、同じ約10話編成予定ながら、一話の長さが最長150ページ予定、最短50ページ予定とかなりコンパクトになる。
しかしこれも当社比較に限った話で、THE WORLDも予定でコミックス全7〜10巻、一般的には長編に分類され、ちょっとアオれば「大」の付く規模の長編作品である。

PALMTHE WORLD共に大河物ではあるが、近代を描き、直線的に描かれた時間がやがて弧を描き輪をなす、という作りのPALMに比して、THE WORLDはお互いにつながりのないエピソードがポンポンと並べられたオムニバス形式を取る。
元々THE WORLDは、短編の効率良い発表を目指して作られた作品であり、予定10話のうち半分は、「ルビー・ブラック」のような、完全に独立した読み切り短編となる予定。
作品そのものの長さに反比例して、作品内時間はTHE WORLDのほうが長く、一話ごとに世界の違った場所、違った時間を点々とする。

 
 タイトル
「我々はみんな椰子の実のようにここに流れ着いた」というカーター先生のセリフにあるように、PALMは「椰子」の意。あとで読者の人に教えてもらったところでは、「(手の平)」という意味でもあるそうだ。元々どうしてそういうタイトルになったかは、みなさんもよくご存知のような理由があるが(WORKS/PALMのどこか参照)、運命とそれに翻弄(?)される主人公たちを象徴している。
一方「THE WORLD」は「(この)世界」という意味のほか、タロットの札では「完結」「究極」「最終的変化」「結論」を意味する。
どうしてもどこかで聞いたタイトルのような気がして、決定前に「THE WORLD」というタイトルの漫画などがなかったか、担当さんに問い合わせたりしていたのだが、あちこちで社名の一部になったりしてるので、(ワールド・トレーディングなんとかとか・・・)気のせいだったらしい。下着メーカーにもそういうのがありますな。

 
 翻訳対応・賞味期限なし
作者であるわたしには、作品のバックグラウンドを、読者や自分自身からかけ離れたところに持っていきたがる癖がある。これには様々な便宜上の理由があると思うが、たぶん自分自身を含めた人間というものを、正直に描くという残酷な作業を、自分にとっても読者にとっても少しは楽にしたいというのが、主立った訳ではないかと思う。
1974年、作者14歳当時(作者が外国人を知らなかったため)同国日本人のみを読者対象としてスタートしたPALM外国であるアメリカを舞台としたが、将来外国訳されることを前提に書かれたTHE WORLDでは、登場する国や地名はほぼすべて架空のものとなっている。

また、PALMは製作時間があまりにも長く、描いている間に実際の時代が作品を追い越したり、また作品が追い抜き返したり、といったことがあらかじめ予想されたため、「未来の読者」も想定して描かれている作品だが、THE WORLDのほうは製作時間が短いうえ完全なファンタジーということで「時代」「時間」に関する設定そのものを、最初からすっぽかしてある。

 

 
 難易度
「決してわかりにくくはないけれど、頭を使う漫画」「漫画なのに難しい漢字ばっかり出てくる漫画」「辞書がなければ読めない漫画(外人さん談)」として、最終的に難解な部類に分類されるPALMは、単にテーマがややこしかったり、頭のいいキャラクターが多くて奴らが立て続けにしゃべるから、という以外にも、作者と読者の情報源やバックグラウンドの大きなズレから、現マーケットの中で結構理解・共感されにくい作品であると言える。

対するTHE WORLDは、キャラクター数とエピソードの長さ・複雑さの減少と共に平易度がアップ。描く話が変わったからと言って作者の情報源やバックグラウンドが変わるわけではないが、数年の外国暮らしによる作者日本語劣化もあいまって、セリフのセンテンスも減少。ほぼ「愛でなく」と同じ環境破壊がテーマながら、主題も抽象化されて感覚的なストーリー展開となっている。
また知能指数が高いとされるキャラがメインを占めているPALMに比べると、THE WORLDの登場人物の主だったところは、てんでおバカさん(発表済みの「ルビー・ブラック」参照)。THE WORLD愚行の歴史と環境破壊の話なので、要するに人類がそんなに賢かったらそんな事態にはならないから、必然的にそういうラインナップになってしまうのだ。
そんなこんなで、PALMのセリフの羅列や理屈屁理屈の嵐が好きだった、と言う人にはちょっと物足りないかも知れないが、展開がアブストラクト化したぶん、更にシュールになったのでは、という説もある。
油断は禁物?この作品は、しつこいまでの人間賛歌劇であるPALMとは一味違った、人間懐疑型ストーリー。そして人間とは何か?世界とは何か?なぜ世界はこうなってしまったのか?人間は本当に破滅破壊型の生き物なのか?ポジティブな資質があるとすればそれは何なのか?どうすればそれを使えるのか?人類と世界を調和させる、その鍵は何か?という謎を追い、答を探す壮大なパズル
通なキミの挑戦を待っている。
 おいおい、むずかしいぞ  ウーン、カンタン・・・

 



 ワイルドになったみんな。キバもあります。
キャラクターもこまめにリサイクルという作者の方針によって、全然違う話なのにPALMとほぼメインキャラクターがいっしょというTHE WORLD、主役はあのJ・Bことジェームス・ブライアン扮するホワイト・ワイルド(WW)(ダブルダブリュ〜とでも読んでやってください。めんどくさかったら「ダブダブ」でもいいんですけど)とあのエティアス・サロニー様扮するブラック・ワイルド(BW)。
ふたりは自称「人間を含むすべての動物の精霊の王」とかいう、なにやら神様のような、モンスターのような「殿」様たちなのだが、この二人を中心に、動物、人間、半分人間で半分動物というようなみなさんが活躍する。

そもそもPALM制作中に「人間ばっか描いてないで、もっと動物も描きたいな〜」と思い続けた雑念の集大成が実はこのTHE WORLDなわけで、キャラクターの大部分が(動物であるか半動物なため)度々動物に変身するだけでなく、キャラクターが人間の姿の時も、また「人間」という設定のキャラクターも、PALMに比べてずっと描かれ方がワイルドになっている。
容貌や動作もワイルドなら、考え方や行動パターンもずっと動物的・原始的なのだ。
そんなキャラクターの変貌ぶりに、ちょっとPALMとの比較を加えて迫ってみよう。

 
 オレ様主義
「オレ様主義」って言ったって、PALMだってそうだったやん、という声が聞こえてきそうだが、THE WORLDを読むと、PALMの人たちがどんなに協調的で思いやりがあり、利他的だったか身にしみるのです。
例えばPALMだったら、ジェームスが撃たれたらカーターが身を挺してかばい、しかもそれが、かばってる対象にぶん殴られても根性でかばい抜くような見事なかばいぶりだったりするのが定番だが、THE WORLDではそんな場面でBWはWW見捨てて逃げてしまう。それも迷うことなく「ほなサヨナラ〜」「スタコラサッサ」というような見事な逃げっぷりだったりするのだ。
お互いに認め合い、支え合ったPALMの人間関係はどこへやら、ひたすら自分勝手に、対抗し、足を引っ張り合い、裏切り合うみなさん。これも「きのうの隣人はきょうの食料(かて)」という動物界の過酷なルールなのか?
またPALMでは一部の例外を除いて純愛路線だった恋愛形式も、動物界の「誰でもいい。何でもいい。」セオリーにのっとって、もはやハーレム状態。処女を妊娠させたり、雨になって女を犯したりなんて話は聞いてはいたけど、ほんに神様はやりたい放題なのである。
守る
逃げる

 
 J・Bはこうなった
PALMでもさんざん性格悪いとか言われつつ、でも結局は好男子だったジェームス君、なぜかTHE WORLDのホワイト・ワイルド役では、とてもひねくれてしまった
好きになった女の子も片っ端から食べて(比喩でなく)しまうので、相棒のブラック・ワイルドからは「青ヒゲ」と呼ばれている(ちなみにBWは自称ドンファン。彼によるとドンファンは女に快楽を与える人で、青ヒゲは片っ端から殺してしまう人なのだそうだ。ホントか?)。
登場人物の少ないTHE WORLDでは、主役のホワイト・ワイルドとブラック・ワイルドは元から孤立しているのだが、いつも大勢の奥さんに囲まれているBWに比べると、WWはますます一匹狼のイメージが強い。だだひとりのお友達のBWもいじめてばかりいるし、大ざっぱなのか助けようとした人たちも殺してしまうし、なんかかなり荒れてるみたいです。でもユーモアのセンスは依然として健在
 いろいろあるが結局いい人  曲がった

 
 サロ様はこうなった
PALMではどこをどう切ってもひたすら怖いだけだったサロニー様、THE WORLDのブラック・ワイルド役では、なかなかはじけたところを見せてくれる。
ちょっとラテンな雰囲気のBWは、オシャレで能天気で軽〜いお味の、どちらかといえばおもしろお兄さんだ。
ちょっと軽すぎて、たまには凄むところも見てみたいが、凄んだところでなぜかあんまり怖くないから漫画というものは不思議だ。
そして彼はとっても女好き。WWと違って非常に女のコに優しい彼は、どんなに長生きしても彼女や奥さんに不自由したことはないのだが、なぜかこれを片っ端からWWにとって食われてしまう。その秘密とは何か(あれば)?
 怖い  くずれた

 
 その他のキャラはこうなった
「ルビー・ブラック」でになったルージュメイアンはすでにお目見えしているが、その他にもあのアンディくんが半人半馬サジタリウス君になったり、アンディのママ、モナ・グラスゴーが人魚で登場する予定。
あくまで人間として登場のカーター先生は、最初のエピソード「コーの白」でネイティブなお姿を見せてくれるほか、そのうち謎の殺し屋として冷徹な演技(?)を見せてくれることになっている。このシリーズでの彼のキーワードは「」。また、彼の恋人役となる丸顔の新キャラクターにも注目しておこう。

Mar.2001


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