●人種/日系3世アメリカ人。母が日系二世アメリカ人で、父はカナダ人移住者である。
●親族/母、ジーン・コフリン。父、レナード・コフリン。両親の死後、カナダの親類に引き取られた、ジョイ・ウィルコックスという18歳年下の妹がいる。はとこにシン・ギャラガー、アンディの父サミエル・グラスゴー、アンジェラの父ロウランド・バーンスタインがいる。なぜかよくはとこや、はとこの子の面倒を見たりして、遠い親戚に縁がある。
●経歴/医師の息子に生まれ、自分も医者を志すが、精神に異常をきたした母と、それをひた隠しにした父との葛藤に苦しみ、18歳で家出。その直後、両親、身を寄せた先の伯父共々死亡。
伯父の家からUCLAの予備大学に通い、その後東部エール大学の医学部進学過程に進む。
24歳のとき、終戦直前のベトナムへ軍医助手として参戦。帰国後インターンとして大学付属病院に勤め、26歳で研修医、28歳で心臓専門医となる。
30歳の時、失恋が原因で突然メディカルセンターを辞職、探偵に転向。1981年、32歳のとき、同じ大学の卒業生だったジェームス・ブライアンを助手に雇う。
●職業/私立探偵
1974年、作者14歳当時、それ以前からあったキャラクターをアレンジして生まれたキャラだ。
ルーツは大体作者11〜12歳ぐらいまでさかのぼれる。最古参キャラクターのジェームスに次いで、2番目に古いグループ(ややこしいのでこれを今後第2世代キャラと呼ぶ)に属するキャラだ。アンディ、アンジェラなども、このカーターと同時期誕生のキャラだ。
カーターが日系人という設定になったのは、元々のルーツであったキャラが、日本のお侍さんだったため。
彼は誕生当時も32歳という設定だったので、当時14歳であった作者には「おじさん」というイメージが強く、いまだに時々中年扱いされているが、誕生当時アクの強い敵役でもあったので、PALMキャラの中ではかなりの出世株(今でいうとサロニーが主役クラスにのしあがったようなもの)とも言える。
PALMにおいてカーター・オーガスは、天才児でヒーローのジェームス・ブライアンと対比をなす、より人間的なキャラクターとして描かれ、性格描写もジェームスの5倍くらい複雑で、複合的な情緒、矛盾、葛藤、限界、俗っぽさ、時にはあさはかさなど、人間のリアルな要素をふんだんに備えている。
しかし彼がアンチ・ヒーローキャラ、もしくは少年漫画で主役の引き立て役として登場する「メガネ君」的キャラかというと、決してそうではない。
ヒーローJ・Bと対等に描かれているだけでなく、彼の多大な尊敬と信頼も受けているカーターは、生身の人間の情熱や真摯さ、あるいは執念が、さまざまな制約や限界を打破して、忘れがたいドラマを生む力を持つことを証明する、より写実的なタイプのヒーローとも言える。
また彼はリアルな反面、最終的に理論や現実の成り行きより感情や直感優先の、感覚的な少女漫画風キャラの面もあり(そのせいか独白なども他のキャラに比べて格段に多い)、PALMがかろうじて少女漫画に分類されているのも、彼によるところが大きいように思う。
●性格
ベースは「紳士」で「常識人」のカーターは、通常にこやかで平静、論理的で、凪いだ海のようにおだやかな人物だが、浅瀬でバチャバチャやってると、いきなり日本海溝のような淵にドーンとぶちあたる。彼の性格の第2層は、複雑で付き合いづらい気難し屋、そしてさらに掘り下げると、深刻なトラウマや情緒、気の遠くなりそうな忍耐強さや深い愛情が姿をあらわす。
彼の性格の基本になっている「真面目さ」は、作者があらゆるジャンル作品の必須条件のひとつと考えているものだ、主人公は、賢くなくても人格的に優れていなくても場合によってはかまわないが、常に真剣でなくてはならない。真剣さのないコメディはくだらなく、シリアスはバカバカしい。その点カーターは非常に優秀な主役で、とにかく深ーく思い込む彼のリアクションで、ギャグをさらにおかしく、シリアスをますます手に汗握る緊張感にしてくれる。
●感情
カーターの感情は非常にオクターブの広いことで知られている。人呼んで「感情のマライア・キャリー」。
バリエーションがある上変わりやすく、情緒はどこの誰よりも深刻。特に怒らせたり悩ませたりすると、さそり座の本領を発揮して情念ドロドロの世界へ。執念深い上に耐久力もあるので、怒ったり悩んだりしている期間もそれは長い(しかもそういう時が一番普通の精神状態だという説もある)。
●頭脳
天才のジェームスに対して、「秀才」の立て看板を持つカーターは、地道に学歴を重ね、資格を取ってきた優等生タイプとされているが、一種透視的頭脳も持っており、物事の隠れた部分を見抜く力や直感力にも長けている。
ちょっとしたヒントですぐピンとくる頭は、フロイドにも「(正確には「その疑い深い性格は」という前置きのもとに)意外に探偵向け」と言われている。ただ彼は、物事に対する興味のあるなしが極端な人間なので、医学以外のことにはあまり頭を使おうとせず、事件のなぞ解きなども大体は「ジェームスにお任せ」と決めているようだ。
●特技
彼カーターは専門バカでたいがいのことに無関心だが、銃を片手に探偵にだってなれるくらいだから、もし本人さえその気になれば意外に何でもそこそここなせる器用な奴なのだ。
たった一曲弾けるというピアノ曲だって「猫ふんじゃった」とかではなく「スターダスト」だったりする。
特に出色なのは演技力で、職業上ちょこちょこ人を騙すのに使うほか、コンゲームでも群を抜いた名演を見せていた。またPALM以外でも、「2821コカ・コーラ」などで、まったく違った役柄に挑戦している演技派なのだ。
●究極奥義
落ち込むともののけのようなおどろおどろしさで周りをも暗くすることができる。
●哲学
カーターは思考の深ーい人間のはずだが、「普通の人」や「スノッブ」を看板にしてるだけあって、意外に哲学的思考家ではない。政治的立場も、世の中の左右の揺れ動き具合で、たやすく立場が右に寄ったり左に寄ったりするという意味で、中道のようだ。
正し宗教的には、押しも押されもしないアンチキリスト教徒。無宗教や宗教的懐疑論者が大半を占めるPALMではあるが、今のところ宗教と激しく葛藤があったのは、彼とはとこのサミエル・グラスゴー(彼はイスラム教徒から改宗)くらいではなかろうか。
○カーターの哲学1/
「そうだ、保留にすればいいんだ。いちいちまともに解答するのは気まじめでいいが、そればかりが能じゃないしな。世間じゃ結構そうやってるんだ。政治を見てみろ、先送りが山積みじゃないか。」
○カーターの哲学2/
「昼メロなら放送ち切りにすればそれですむが、収拾がつかなくなっても打ち切りにできんのが人生というものさ。」
(と、言ったあとフリスに「だったらもっとシャッキリしろよ。」と突っ込まれてました)
●ウイット
カーターはセリフ回しが機智に富んでいることではピカ一だ。しかし比喩や例えを交えた複雑な言い回しのため、どうしてもセリフが舞台劇並みに長くなり、デビュー当時作者は、「カーターのセリフを削ったほうがいいのでは」という編集担当者を、彼の個性表現のためセリフをそのまま残すよう説得しなくてはならなかった。PALMのキャプションにやたらと漢字が多いのも彼のせいなのだ。
●嗜好
カーターの嗜好には、結構タイトなものがあると思われる。コーヒーはブラック、ジャネットと別れたあとの2年間の隠者生活中は酒を食事変わりにしていたというし、ジェームスの豆料理にも苦情らしきものを言ったためしがないから、味覚がないかもという疑いもある。
しかしとにかく酒のグラスだけはいつもさりげなく手にしており、はとこの誰かさんとは対象的に酒量が顔に出ないながら、周囲からは「ザル」とか「コーヒー代わりに酒を飲む」という評価も出ている。
また彼はスモーカーで、「あるはず・・・」のあたりでは始終彼のまわりに紫煙が漂っていたのだが、ジェームスとの同居以降、その頻度はなぜか目に見えて減ってきている。
●癖
作者14歳のカーター誕生時、彼のデータの「癖」の項目には「苦笑」と書かれていた。この癖は今でも健在だ。おなじみの、頬に汗するギャグな表情から、シリアスな苦笑いまで、感情のストレートな他のキャラにはなかなか見られない複合的な表情を見せてくれる。
苦笑した顔の上では、片方の眉は笑い、もう片方は泣いていなければならず、この両眉の段差こそが、複合的感情=ふたつ以上の感情をあらわす表情を意味する。言いかえれば、片方の目が隠れてしまっているジェームスなどには、逆立ちしてもできない表情ということになる。
●趣味
なし!(カーターは無趣味な男・・・)
●弱点
弱点を表看板にしているわりに、これといった弱点のない彼だが、やはり決定的なのは恋人のジャネットその人だろう。彼女のことを持ち出されたり、話題が彼女のことに近づきそうになるだけで彼の思考回路は爆発するらしく、話を変えようとして墓穴を掘ったり、公衆電話の前で一人芝居をしてみたり、いろいろと奇怪な発言と行動の記録を持っている。その最たるものは、フロイドに思い人がいるという話を聞き、「まさかジャネットじゃあるまいな」思いきり飛躍した発言をして「あんたも恋に狂った男丸出しだな。」とフロイドに突っ込まれたことだろうか。
また彼には、土壇場に強い反面、「窮地に陥らないと実力が出ない」という困った性(さが)がある。作品が平和な展開だと、主役なのに外野のようなポジションに埋没してしまうのだ。しかし本人は休暇よろしくぬくぬくと幸せそうなので、一種の充電期間なのかも知れない。
●言葉遣いチェック
作者周辺では「カーター言葉」と呼ばれている彼のセリフ回しの基本は、「中年紳士言葉」だ。
丁寧かつおじさん臭いこの言葉使いのルーツは、作者が小学生時代愛読していた「ドリトル先生物語」の、ドリトル先生その人のセリフ回しが影響していると思われる(ついでに言うと、フロイドやフリスの「べらんめえ調」は同じシリーズのキャラ「スズメのチープサイド」がルーツと思われる)。
そんなわけで彼の言葉遣いは英国紳士調で慇懃婉曲、口の悪いPALM主要キャラの中ではダントツにいい言葉遣いと言える。ただはとこのシンに接する時などは、たまに例外的に汚い言葉遣いになるようで、カーターの穏健な言葉遣いに慣れた他のキャラたちをびっくりさせている。
●人相チェック
肌・黄色、髪・黒、目・カーキ色。カーターの顔は基本的に、平たいあごの形が特徴的な、「馬面のダンディなおじさん顔」をベースにしている。これに日系人という設定により、切れ長の目、黒くまっすぐな髪といったエキゾチックな要素が加わる。長いストレートな黒髪は、モンゴロイドの代表的イメージらしく、作品の内外を問わず黄色人種以外の方に特に受けがいいようだ。
彼の顔はニコニコ笑っているときは感じのいい中年紳士だが、怒ると化けて出た日本女性みたいなすごみが出て、人相が変わる。感情のバリエーションの分だけ、人相も変化するキャラクターだ。
●身体チェック
身長172センチ。中肉中背だが、大柄なキャラが多いPALMではやや小柄な部類。
長身のジェームスと並んで描かれることが多いためと、蟹座上昇宮のために、足の比率が多い「短胴 足長」体型であり、基本的には鳩胸気味の、意外にがっしりした体格である。
作品上では他のキャラクターとのコントラストを出すため、欧米風体型の大柄な男性と並んだときは体つきを細目に、小柄な男性と並んだときは標準的に、女性と並ぶときはより男性的な体型にと、そのつど描き分けられている。
●服装チェック
トラディショナルな三つ揃いのスーツスタイルが基本。色は茶系、グレー系、白系のいずれか。時々スカーフやタイピンの使い方などでスノッブな面をのぞかせている。
家でリラックスしているときも、ネクタイを締めたシャツの上にガウンをはおっていたりするほどの立派な身だしなみで、ジェームスみたいに、上半身裸で家の中をうろつくようなことは何があってもしない。
不眠不休の非常時にのみ、シャツの襟をはだけて、ネクタイを首にぶらさげたカーターを見ることができる。
イタリアン・トラッドのスーツがはやり始めてから、カーターの衣装デザインにはほぼお手上げ状態なのが、作者の悩みといえば悩み。
●持ち物チェック
PALMのキャラの中でも、特にアクセサリーが多いのがこのカーターだ。
○持ち物(1)サングラス/
まずトレードマークの度入りサングラス。これは白黒画面だとわからないが、服の色に合わせて、最低でも2色以上同じ型のものを持っていると考えられる。医療に従事するときは、これを角型の透明メガネにかけかえている。
○持ち物(2)煙草/
銘柄はケント。が、箱ごと持ち歩かず、きちんとシガレット・ケースに入れて持ち歩いているところがなんと言ってもカーター。
○持ち物(3)車/
カーターの車は、一枚の雑誌の切り抜きをもとに長年描かれていたのだが、デビュー数年もしてから、これがボルボであることがわかった(作者は実は車に限らずブランド音痴)。
ボルボというのは、世界一安全なことと「おじさん車(生活の安定したファミリーマンの選ぶ車)」として名高いらしい。
○持ち物(4)銃/
作者は始め、「カーターが持ち歩く銃」としてオートマチックを設定したのだが、結局ほとんど携帯することがないため、その銃はほとんど作品上で見かけない。代わりに彼は、居間のソファに隠してある予備の銃や、人に借りた銃を手にする場面が多いようだ。
●体力チェック
カーターは腕っ節が強いわけでもないし、体が大きいわけでもなく、やくざなおにいさんたちに囲まれがちなPALMでは、間違いなくお上品な学者タイプだなのだが、非常時には意外に持久力のあるところを見せている。不規則な生活や徹夜にも強く、その気になればアルコール燃料だけでも2年くらいは生きていけるらしいから、結構哺乳類離れしている。もともと心臓外科医だったから、夜中に呼び出されて何時間もぶっ続けで手術してもへっちゃらなくらいの基礎体力は不可欠だったのだろう。
●セクシャル・オリエンテーション
この項目は、カーター本人が「性別と性嗜好の確認は絶対必要」と言うので設けたものだ。そういう彼はストレートの男性。自他共に認める「性的スノッブ」。しかしなぜかジェームスには時々女性と疑われている(ほんとに疑っているかは定かじゃないが)ことが判明して本人は生きた心地がしない。悩む彼。でも悩む姿は楽しそう。第一本当に悩む必要があるのか(誰にもわかるただのギャグなのに・・・)?謎は深まるばかりだ。
●お住い拝見
PALMシリーズの主な舞台になっている彼の持ち家は、元々叔父のレイフ・オーガスのものだった。スペイン風の建物で、元は裏庭にプールがあり、カーターを引き取る際に、レイフは水に恐い思い出のあるカーターのために、これを埋め立てている。
大きな一階の広間は、ピアニストであったレイフの時代には小さなコンサートのできるホールだった。カーターに家が引き継がれたあと、家は一時学生の下宿となり、ジャネットとの失恋により憔悴したカーターによって廃屋になりかけたが、ジェームスらが住み着いたのちは温室も建て増しされて緑の植物園として(?)再建。
ちなみにカーターの家と隣の家は、元一件の邸宅で、地下のワイン倉で今もつながっていることが、「オールスター・・・」で明らかになった。
●生活態度チェック
カーターは身だしなみや言葉遣いこそきちんとしているが、それ以外はあきれるほどルーズな男だ。料理や掃除などの家事は一切しないし、日曜大工や庭の手入れなんかますますもってしない。おしゃれで伸ばしていると思っていた髪の毛だって、手入れがもっとも要らないというのでああなっているというのだから見上げたものだ(もっとすごいところでは、60年代の風潮に乗って肩くらいまで伸ばしたまま、ブームが去ってもほったらかしにしてあの長さになったという説もある)。
探偵の仕事もまじめにしてるようには見えないし、妹のジョイの手紙にも返事を書かないのでジェームスが代わりに返信してやってるらしいし、人任せにしていないことといったら、せいぜいジャネットとのデートと手術の執刀ぐらいではないのだろうか。
●社会的ポジション
「ドクター」という押しも押されもしない社会的ポジションを若いときに築いた彼だが、これをまた、一夜のうちに(恋のために)棒に振ってしまうことで、漫画の主人公になれるくらいのハクがついた。
そんなわけで彼の現在での社会的ポジションは元医者の私立探偵(そのまんまですが)。悪く言えばドロップアウトした医者、もっと悪い場合は「元マイケル・ネガットことジェームス・ブライアンの現在の雇い主」。また政治的ポリシーや哲学面から見ると、「ごくごく普通の人」でもある。
ただし社会的立場によらず問題の部下からは「ボス」として純粋に尊敬され忠誠を得、医者仲間にもいまだに厚い信頼を寄せられているらしい彼。やはり大事なのは肩書きよりも人間関係か。
●世間の評判
ちまたの評判のいいことでは、何と言っても彼はトップだろう。多少偏屈なところはあるが、正真正銘の奇人変人ぞろいのPALMの中ではなんでもない。時々雲隠れしたり、近所付き合いに怠慢な面のある他は、社交的で如才がない。とにかくなんといっても、彼の世間的評価を高めているのはその感じのよさだろう。
感じよく振る舞おうという発想が欠落した他のメンバーにもし君が囲まれたとき、一言フォローしてくれる彼は間違いなく天使さまに見えるはずだ。
●ちょっと失言
○「奥さんと関係していたのはわたしです!」
○「男が豹変して何が悪い?そんな私生活の末端部まで、とことん紳士でいられるものか。」
○「わたしだって一生に一度くらい女性に襲われてみたいよ。」
○「そりゃあ(セクハラは)こわいが、こわいと思えるうちが華だろうな、ああいうものは。」
PALM一の常識人にしては失言の絶えない彼・・・・
●お歳はいくつ?
ジェームスより11歳も年上の彼だが、医者時代に年長者に囲まれていたからか、おじさんにしては妙に若々しい。実は彼はあのフロイドと同世代だが、なぜかフロイドは自分の歳を隠しているので、カーターはその事実を知らない。
ちなみに、刑務所でジェームスの副官をやっていたティットはカーターより2歳年下、童顔の恋人ジャネットはカーターより 3歳年下である。
●恋愛遍歴
フロイドやシンによって、さんざん「十人斬り」とか、悪いおじさん呼ばわりされて、プレイボーイのレッテルを貼られている彼だが、恋愛数は平均的アメリカ青年の数字ということらしい。と、いうことは恋愛回数の少なめな他のPALMキャラの中にあっては、やはりかなり多い。特にジャネットと出会う前の大学時代がピークで、本人も記憶を整理するのが難しかった時期があったようだ。
ジャネットとの失恋後の隠者生活期にさえ、ちゃっかりビアトリスいう愛人がいたし、不精な彼にしては、恋愛はいつもスケジュールいっぱいのにぎやかな分野といえる。
●仲良しは誰?
あいそのいいわりに気難しい彼は、知り合いは多くても、本当に気持ちの許せる友だちは少ない口だ。
人間関係に対してある程度以上は努力もせず、マメでもないので、相手の積極度がかなり必要になる。そんなこんなで、一番積極的で図々しく、思い込みも激しくマメだったジェームス・ブライアンが、彼の生涯の大親友の座をゲット。ジェームス以前に、伯父のレイフや同じ大学出身(そういえばジェームスも同窓生)のジョン・ミハリクなどもいたが、開かずの間だらけの彼の心の奥底にずんずん踏み込み、扉をバンバン開け放つのは簡単なことではなかったようだ。
またジェームス登場と同時に同居するようになり、最初はいがみ合っていた(?)アンジェラとも、「常識人(?)」という共通点をもって日に日に結束が固くなり、ジェームスとシド先生が恋愛成就したあたりでは、手に手を取って喜び合う同志となった。
●占いデータ
ライフナンバー6、太陽宮蠍座、上昇宮蟹座、月の位置山羊座、丑(うし)年生まれ。
ライフナンバーの6も蠍座も善人か悪人のどちらかが出現して中間がないと言われている。良性の蠍の6は、俗世に流されそうになったり自己との葛藤があるが、持ち前の洞察力で最終的には正義漢、というコンビネーションだ。
ジェームスが不動宮の影響を強く受けているのに対し、このカーターは実は攻撃宮のカラーが支配的。家庭的で愛や情緒を重んじる蟹座と、社会的で野心や体裁に生きる山羊座の共存で自己葛藤も激しい。また蠍座と丑年のカップリングは「途方もない気の長さ」を生む。
●そこまで言うか
穏健なイメージなのに、よく聞いていると彼の物言いは時々意外に冷たい。酒を一気飲みして倒れた犬のローズを介抱しかけたジェームスに一言「ほっときなさい。死にゃしないよ」(この時彼は酔ってましたが・・・)、以前自分を刺そうとした麻薬の売人(グレッグ)との交渉に出かけるジェームスに対して「大丈夫かな?」と言ったワイエスにも一言「何大丈夫さ。ジェームスは人を乗せるのがうまい。」などなど、結構じゃけんだ。
彼がうんと腹を立てると、このじゃけんさに、妙な論理性やウイットが加わるからまたすごい。アンジェラに「(前文略)君と暮らすくらいなら、歩き回るサボテンかヤマアラシとでも暮らした方がまだしもだ。(長ーい後文略)」と言い放ったあの一言をはじめとして、「星の歴史」でシャーロット警部にタンカを切ったときの「(長ーい前文略)ごらんの通りわたしは今気分がすぐれんのでね。これ以上待たせるとあんたの面にへどを吐きかけるぞ」うんぬんなど、彼のキツーイお人柄と、居直ったときの異様に冷えた頭脳がしのばれる、たたみかけるような長文毒舌を披露してくれる。
●よくよく見れば
○繊細→でもずぶとい
カーターは普通人を気取っているが、普通の人なら悲鳴をあげるようなシチュエーションで意外にケロッとしているふてえ奴だ。「スタンダード」で、内蔵の出た死体を見てフムフム言ってたし(この時、ジェームスがさりげなく死体から目をそらしていたのに君は気付いたか?)、サロニーにゴーモンされても顔色一つ変えない。おまけにすっ飛んで助けにきたジェームスに「心配しなくていいからおうちに帰んなさいね。」なんてボケまでかましてしまう。しかし周りが平然としているときに限って落ち着きがなく、一人でオタオタして墓穴を掘ったりもする。
○いい人→でも悪党
カーターはいい人だ。思いやりや気配りも人一倍だし、いざとなれば助手の盾になって死ぬ覚悟を2度も3度も見せてくれた立派なボスでもある。しかし「そこまで言うか」で書いた通り、いつも優しいと信じていると、意外な肩すかしを食うことも少なくない。品行方正そうなイメージのくせに実は間男やってたりするし、髪を伸ばして反戦運動でもしてたのかと思うと実は参戦してたりして、なんだかもうよくわからない。
教会の祭壇をぶっこわしたりしたのと事実上は直接関係ないものの、その直後に両親やおじさんがバタバタ死んだので、自分に対して悪魔的要素を感じている節すらある。
あの死神サロニー様と渡り合ったときも、確かにあまり引けは取っていなかったようだし、もしかして、医者にならなかったら一体何になっていたのでしょう、彼は・・・・
●
PALM
金銀熊鮫
月の猫
2821コカコーラ
THE WORLD
○カーターもジェームス同様、あの作品にもこの作品にも顔を出している、と思っていたが、そのほとんどは未発表の習作なので、読者の人が知っている役柄の代表的なものは、「2821・・・」のロディ・シモンズ役くらいだろう。普段と180度逆の軽い演技で、なかなか見事な変身ぶりだった。
しかしカーターの大変身は作者には珍しくなく、信じないだろうけど、ある習作では暴走族のリーダー役までこなしている(これがまたなかなか堂に入っていた・・・)。ジェームスの演じた「2821・・・」のアルフレッドの雛形みたいなファシスト役なんかもあった。せっかく芸達者なので、もっといろんな作品に出てほしいね(あ、わたしが書くんかい・・・)。
●作者ひいき度
カーターはジェームスに次いでの作者ひいきキャラだ。誕生時は作者と年齢差がありすぎで煙たがられてたが、時を経てからは「なんとなく癖になる」「しばらく見ないと物足りない」「からかうとおもしろい」と作者に思わせる、不思議な存在感が彼の強みになった。おまけにここぞと言うときは、けっこう頼りになるキャラだ。カーターとわたしが一番団結してたのは「あるはずのない海」のころで、その時は自分がカーターじゃないかと思うほど一体化してたものだ。
ただ彼は、前記の通り作品の内容が切迫してこないと頼りにならないところがあって、「スタンダード・・・」や「愛でなく」のようなほのぼの路線のときは、まるで「シンちゃん」のような「かき回しキャラ」に近い存在になってしまったりする。しかしそんな「一本抜けた」カーターもやっぱり大好きなのだ。
作者はえんえん彼と付きあっているので、60何色の色えんぴつセットくらいある彼の魅力のうちでも、特に「これはなんじゃ?」というような名前の付いた微妙な色合いに着目してしまう。例えば、「スタンダード・・」で焼け出されたティナを迎え入れたオーガス家の面々(と客)が、彼女の元気のなさを取りざたしたあげく、それが睡眠不足のせいと気が付いて、「そうだわ!忘れてたわ!ゆうべ火事だったんだもの!寝てないのよ!」とひとしきり騒いだ後、カーターがとんでもない間合いで「それはうっかりしていたな。ティナ、眠いかい?」と、ティナに尋ねるといった、読者の人にとっては笑う個所ではないと思われるシーンで、机を叩いて笑いこけてしまったりする。
PALMの内外をざっと見渡しても、こんな人間くさいキャラはそうそういないよな、と我が子ながら思ってしまう。多重構造で奥深で人間味あふれるという点では、うちのカーターは刑事コロンボより絶対曲者(????)に違いない。
●カーターファン
○カーターファンは「口うるさい人」?
ジェームスファンが多様なのに対して、カーターファンの層は固定する傾向にある。一言で言うと「文学少年少女タイプ」が多い。カーターファンは、インテリで秀才タイプ、漫画やその他の本をある程度マニアックに読んで、しかも深く研究・考察するような読者が主流のようだ。
関口さんによると、「カーターは浮気をするがカーターファンは浮気をしない」そうである。つまり、カーターファンは他のキャラに乗り換えてしまったり、途中で作品を読まなくなったりすることが少ないらしい(ほんとかい?)。
実はあるインタビューで、わたしが「カーターファンはうるさ型、ジェームスファンはミーハー」と言ったところ、ちょっとした書き間違いで「カーターファンは口うるさい人」と載り、以後カーターファンは口うるさいことになっているようです。
●編集者の評判
やはり「文学少年少女好き」するせいか、カーターは今のところ編集者の支持率ナンバーワンである。特に男性編集者の支持率は高く、まあ仕事だから私的感情は控えているにしても、かなり入れ込んでいるふしのあった担当さんたちもいた。どうしてなのかな?
●「さん」付けのなぞ
あなたはカーター・オーガスを何と呼んでいますか?
作者の周りの友人、編集者、手紙をくれる読者の人の大部分は「カーターさん」と呼んでいる。「なぜだかわからないが“さん”を付けてしまう」そうだ。やっぱり相手がおじさんだからか、それともカーター自身がプライトな紳士だからか?
ちなみに作者も20代くらいまでは「カーターさん」と呼んでいました。最近は「カーター」だけど・・・。だってやっこさんもう年下だしね。
●読者のつけたあだ名
○カーターおやじ
これは作者14歳のカーター誕生時、当時の作者親友マリ(仮名)がつけたもの。
あきらかに好感を持ってつけたのではないとわかるあだ名だが、当時カーターはわたしたちには本当におじさんで、悪役で、素行もよくなく、人によっては「ちょっと不潔」「いやらしい」と思えるような存在だったのだ。マリは彼を長いことこのあだ名で軽蔑をこめて呼んでいたのだが(「スケベおやじ」とさえ呼んでいた・・・)、今のカーターは好きになってちゃんと「カーターさん」と呼んでいる・・・。
○うんちく帝王
知人のウキウキモンキーさん命名。
|