【117-3d】ガジェット/3Dについて

今回『ガジェット』の挿し絵を3Dで制作して思った事など、徒然に書いてみました。よろしかったらおつきあいください。

さて、右がレンダリング画像にPhotoshopで加工した最終画像。 そして下がShadeの作業用画像です。
まるで小学校の演劇で、竹ヒゴを糸でしばって骨組みを作り、糊をつけた紙を貼ったお面のよう・・・ですがShadeの場合、かなり近いものがあります。(以下「ハリボテ画面」と呼ばせていただきます)

●ハリボテ画面は以下のように構成されています。
上面図
透視図
正面図
側面図

小説に合わせてポーズをつけ、表情、ライティング、カメラアングルを決めて・・・といった作業はこのハリボテ画面で進めます。だいたいこんなもんかな?というところで初めてレンダリング開始です。このために何時間もハリボテ画面と格闘してきたのですから、一番興奮します。(笑)
大抵こちらの想像とはまったく違う・・・上手く言えませんが、良い意味でも悪い意味でも裏切ってくれるので、自分が作ったにもかかわらず毎回驚いてます。2次元のイラストとどこが違うのか?というと、私の場合、実にここです。

余談になりますが、Shadeは他のソフトよりデータが軽いと聞きます。
しかし、ボディー3体に背景や小物等詰め込んでいくと結構なデータサイズになるのは当たり前。最高は32.8MB(笑)、第7話の食事シーンです。小物の特殊設定もさることながらライトを5個ほど焚いたのが原因みたいです。
そんなわけで保存した「GADGET」フォルダはトータル787MB。CDに焼いて保存するのも難しいサイズになりました。(笑)

●左がレンダリング時のイメージ画像
 大きいモザイク画像からはっきりした画像が現れてくる瞬間が楽しみで、ぼーっと何もせず見つめてしまうことが多い。(馬鹿)

おおまかなところで決定したら、後は小物の位置やライティング、カメラアングルの微調整をします。この場面は夜のリュミエールの部屋なので、暖かい白熱電球のような照明を左側からあてていますが、青い照明に変えると(右画像参照)まるで、どっかのバーカウンターで女の子を誘ってるように見えます・・・ね。(笑)

実際、照明はいくらでも嘘がつけます。(フットライトで皺を隠すとか)
ただ、仕事でモデルさんのスタジオ撮影に立ち会っても、ポラの上がりを見て「この影とバックのグラデを取りましょう」と指示するだけで、その影がどうやってできるのか?光量の計算って何?とライティング技術は知らないまま今日まできてしまいました。
(今になって思うと恥をかいてでも勉強させてもらうべきでした)
そんな私はテレビや映画で再度勉強。印象に残ったライティングや色は、手探りで試しては戻すの繰り返し。”効果的”な照明を見つけるのは難しかった。

ところが最近になって観直した市川昆監督の「金田一シリーズ」には具体的で効果的なライティングが多く、勉強するところがいっぱいでした。
「病院坂・・・」での、いくらなんでもそりゃ嘘だぁ!!と叫びたくなるようなライティングが”演出”として絶妙なのです。
おまけにShadeはパーツによって「影を落とす」「影付けをしない」など、市川監督が聞いたら泣いて喜びそうな大嘘がつけます。

しかし、女優が大根だったらどんなライティングや演出しても使えないように、Shadeも元がダメだと使えません。オスカーの足許がどうしてもオスカーらしくならず、結局没になった画像があるように、レンダリングの瞬間に想いをはせ、ハリボテ画面と格闘するわけです。

 

 瞳とキャラクターについて
オリヴィエ、リュミエール、オスカーの場合、フェイスラインは、鼻のカタチが違うとか、オスカーのテンプル部分が少し広いくらいで、あまり変わりません。そうなるとキャラクターを作り分ける要素はおおまかに言って髪型です。髪型は一目瞭然なので、ここでは瞳について説明します。
照明は左下から青、右上から白の2つ、どれも同じカメラ位置でレンダリングしてます。
 オリヴィエ  リュミエール  オスカー

瞳の色はブルーアッシュ
冬の海の色です。
タレ目でつり眉という特徴がありますが、最初、目尻を下げただけではオリヴィエには見えませんでした。タレ目に見える要素として下の泪丘を強調し、下まつげを思いっきり下に長くしました。

 

瞳の色は濃いブルー
深い海の色です。
リュミエールはどちらかというと切れ長の瞳のイメージがあったので目尻は下げず、まつげも涼しい感じ・・・くらいで抑えています。もう少し内側を広くしたかったのですが、パスラインに無理がありました。

 

瞳の色はアイスブルー
プールの色です。(笑)
オスカーほど瞳に特徴がある人はいません・・・しかしリアル系3Dでは、かなり無理のある瞳です。パスラインの限界まで目尻を高くし、あとはまつげで強調しました。瞳孔が小さいのが特徴です。

 

 アレンジ/閉じ  アレンジ/伏せ  アレンジ/微笑
瞳を閉じた状態です。
閉じた時だけまつげの色を変えています。アップで見るとシュロの葉のようにバサバサですが、ロングショットだとこれで丁度いいくらい。これでパールのシャドウを入れられたら・・・。
伏せ目がちなショットが多いリュミエールのために作った表情です。(閉じないけどまつげだけ下を向くなんて・・・)ブルーグレーのまつげとそのまつげが落とす影とのバランスが難しくて、なかなか使用できませんでした。 笑顔のオスカーのための表情。口元だけで笑わせるのではどうしても無理!と思ったシーンのために作りました。基本的に目の下のラインを上げただけですが、これだけで優しい表情になるので他の2人でも試してみたいです。

 

 可動部分とポーズについて

Shadeでのアニメーションは、まだ厳しいものがありますが、キャラクターのポーズを変えるくらいなら、頑張れます。(笑)ここでは腕を例にとって説明してみます。

まず、左の画面が『ブラウザ』とよばれるShadeオブジェクトの階層を表すもので、非常に重要かつ素晴らしいインターフェイスです。
左図は、オリヴィエが赤いコートを着た時の腕から下の可動パートを表示しています。『コート腕前後回転』から始まって、次々に入れ子式に可動パートを作るわけです。腕ひとつとってもこれだけの数があり、全身だと・・・数えたこともありません。
『コート腕前後回転』は名前の通り、腕を前後に可動させるための『回転パーツ』で、ハリボテ画面に回転軸を作り、ブラウザに表示された『回転』パートに、自分でわかりやすい名前を入力していく・・・わけです(こう書いてもわかりにくいよね)(笑)。
実際、可動させる場合、ブラウザ画面の左上にある上下にスクロールさせるバーを使って可動数値を決めます。この画面では『コート腕前後回転』は『-0.18』。前方に少し腕を伸ばした状態です。
こうして、可動パーツの数値を必要な箇所に、それぞれ入力し、とらせたいポーズに近付けていくわけです。

●下記画像/指の可動パーツで設定したもの

 

 Photoshopでの最終加工について

挿し絵ということもあって、今回レンダリングした画像は全てPhotoshopで加工。
3Dでレンダリングされた生々しさをなるべく排除し、残像のような効果を出すためです。

(1)
左の画面がShadeのレンダリング画像
何の加工も加えていない状態です。
やはりこのままでは生々しい感じがあります。
(そこがShade3Dのいいトコでもあるんですけどね)

(2)
まず、Photoshopの「イメージ」→「色調補正」→「色相・彩度」で「彩度」を-50に落とします。
彩度が落ちてモノクロ写真と中間のような色調になりました。
しかし、まだ素材感はあります。

(3)
今度は(2)の画像を新規画面にコピー&ペーストし、
「フィルタ」→「スケッチ」→「ハーフトーンパターン」で、パターンタイプ「線」を選びテレビの走査線が入ったように加工します 。

(4)
先ほどの(2)の画像に(3)の画像をレイヤーで重ね、レイヤーパターン「スクリーン」を選び、不透明度を50%に設定します。
(レイヤーパターンや不透明度は、挿し絵によっていろいろ変更しています)
(5)
少々デジタルチックでスペクトラっぽい挿し絵が完成。

お疲れ様でした。(笑)