生徒総会も無事終わったその夜。オスカーの部屋にオリヴィエとリュミエールはいた。
「見せたかったですよ、オスカー、あなたに」
「はん、そんなこっぱずかしい場面に居合わせなくて良かったと思ってるぜ俺は」
「とか言いつつ、口の端上がってるよ!・・・相変わらず素直じゃないね〜え」
「そうですよ、オスカー。アンジェリークの暴挙・・・いえ英断が効を奏したことには感謝すべきです。あとロザリアも。陰ながら尽力してくれました」
口々に言う二人。オスカーは何気ない仕草で立てかけてあったギターを手に取り、ひとはじきした。
「ああ。二人には明日にでも真っ先に礼を言わなくちゃな・・・。いや、集まってくれたみんなにも」
「ああら、ワタシら二人には?」
「話に聞く限りじゃ、単に尻馬にのっかっただけみたいだが?」
「そーゆーこと言う〜?」
いささか不満げなオリヴィエにリュミエールは穏やかにいった。
「その通りといえばそうです、別に私達のことはいいですよ。今更誤解などしようもない付き合いですから」
「そういうことだ。・・・別に皆からどう思われてようとかまわん、俺は俺だ」
そのことを一番知ってるのは目の前の二人。オスカーは言いかけた言葉を飲んで、照れを隠すように話題を変えた。
「今度のライブの弾き語りコーナー、俺は選曲を変える」
「『バス・ストップ』やめるの?」
「良い歌なのに・・・」
「ああ、歌いたい歌があるんだ。お前等見てて、たった今思いついた」
そう言って彼はイントロを弾き、鼻歌を口ずさみだした。RCサクセション。
今までしてきた悪いことだけで
僕が明日有名になっても
どうってことないぜ まるで気にしない
・・・・『君が僕を知ってる』。
オリヴィエとリュミエールは、顔を見合わせた。
「・・・はは・・・・、いいね、ベタ繋がりで」
「良いかもしれませんね、私もその歌は好きですよ」
「少し女々しいかもしれんが、な」
「いいんじゃない?そんなオスカー先輩も。ファンが増えるよ☆」
3人の笑い声が部屋に満ちた。その時。
「すいません、お邪魔します!」
思わぬ場所から声が挙がった。3人は驚いて一斉に窓に向く。外の木の枝に、必死の形相でつかまっているアンジェリーク。
「アンタ・・・またっ!今度は何??」
「あの、一言謝りたくって・・・男子寮入れないし・・・あっ!」
同時に、枝が折れる音。
「きゃあっ!」
慌てた3人は掛け寄り、窓から乗り出し下方を見た。
「大丈夫か?!!」
下の茂みから金の髪が現れた。
「今度は大丈夫です!!あ、もういいです、本当にごめんなさい!」
彼女は頭を下げて駆け出し、少しばかり行ったところで振り返って大きく手を振った。
「私もその歌、大好きです〜〜〜っ!!」
気持ちはわかるが・・・大声はよせ。3人の心の声はひとつだった。
《続く》