◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆アトノマツリ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Kの歪んだ愛情

短編『SUGAR FIX』


 こう公言するのもナニなような気がしますが、私は…たとえばゲームでのいかにもオスカーらしい熱い甘い口説き文句とかに「なんてかっこいいの、オスカーーーー!」とTVに向かって絶叫したりとか、「ああっ、こんなことを言われてみたいっ!」と悶絶したりしたことがあまりありません。頻度で言うならオリヴィエやリュミに対してそう思うほうが断然多いです。だもんですから、自分でも「なんで私はオスカーが一番好きなんだろうか」ということを考えてみては、いつもよくわからない。
 ただ、ひとつだけわかっていることがあって。私のオスカーに対する愛の形というものをヒトコトで言うなら、それは『溺愛』の類であるということです。
 『溺愛』…実にタチの悪い、ある意味ヒトをヒトとも思っていない愛し方。目の中に入れても痛くない、可愛い子には旅をさせるが後ろから救急箱持ってあとつけて歩く、そんな私。オリヴィエやリュミにはここまでの気持ちは無い。そう、私はオスカーに対しては…対してだけは「ベロベロに甘やかし」(コミック版一巻オリヴィエの台詞参照)。オスカーなら何言っても何やっても許す!既に性格云々、恋愛対象としては云々する状況ではないのであります。…なんでそんなトコへ一足飛び(?)に行ってしまったのか…本当に自分でも謎でしかありません。よもや胸板ひとつで(『フーリガン放談』初回参照)そこまでなるとも考えにくいし、つーか、そんな人どんな人よ。<変態です。
 私のオスカー観というのは(17歳設定なので多少誇張は加えておりますが)概ねこの話に書いたような感じです。人が漠然と考えるわかりやすい幸福はすべて持っていて、しかも当然至極と自信満々、そこに謙虚な気持ちさえない。…これでは周囲といらん軋轢を起こしているだろうことは想像に難くありません。いかな美形であろうとも、わりと『遠くで観賞していたいタイプ』に分類されるんではないでしょうかコレ?カノジョにでもなった日には、嫉妬含みで毎朝上履きに画鋲入れられるくらいのことは覚悟せんと。オスカーが常々女性に対して「どんなことがあっても俺が守る!」的な発言をするのは過去の歴代カノジョが皆そんな憂き目にあってるからじゃないかと…(<余計なお世話)。
 ただオスカーの名誉のために言い置いておきますと。聖地での彼を見る限り、オスカーは別に人付き合いがことさら下手ってワケではない。“上司”(ジュリアス)や“後輩”(ランディ)などの体育会系縦関係、あるいは絶対的弱者、庇護されるべき者としての“女性”との関係、なんてのは得意中の得意。しかし私が考えるに、それは「対等になりえない」という前提があって初めて発生する人間関係だからなのではないかと。彼に足りない「相手の立場への尊重」がこういった上下の関係性であるなら自然にできる(笑)。私がこの『SUGAR FIX』で、オスカーの相手を“年下の使用人”としたのにも、そういうわけがあるのです。
 私の中では既に鉄板設定、「守護聖以前のオスカーには同年代の対等な親友はいなかったハズ」。そう思うことさえ既に身勝手な思い込みだというのにキシダの『溺愛』は単純にそこで終わらせない。
 そんな彼をわかってくれるヒトだっているはず、そうよ、聖地という特殊環境下において初めて、かつ強引に成立した「対等」により運命的に出会う“真の友”、それが中堅組なのよ!それ以前に仲良しがいたなんてダメ〜〜〜!…かといって守護聖以前の彼にまったく理解者がいなかったというのも可哀想だ、そうだ可愛い手下的な…使用人なんてどうだ!
 『SUGAR FIX』は、そんな独断と偏見と偏愛と馬鹿さ加減が書かせたこの一本。ある意味、私にしか書けない(<何の自慢にもならねぇ…)。俗に言われる「キシダのかーちゃんモード」とは、かように歪み世間とは既に折り合いのつかない粋に達しておるのでありました…。皆様引かないで…一応害は無い、はずなので…。

| NEXT |
| HOME | NOVELS TOP |