かれこれの経緯を経て、この『ガジェット』は出来上がりました、2001年1月のこと。
結果予想を超えた長さに、いきなり10日おき連載に変更などという迷惑な荒技も繰り出したりしつつ(笑)一年近い連載はなんとか終了、毎回更新されるごとに「いったいどうなるんでしょう?」的な感想をいただいて、それに答えたいのに答えられない日々もようやっと終わり(笑)。この話の内容についての話を少しさせてください。
部分部分、明瞭なシーン・台詞等はあったものの、私の中でのこの話というのは最初「3人がとにかくどっか行くでしょ、そこでなんでか喧嘩になるワケ、で、個人行動なんかもしちゃうのよ。でも結局わかりあっちゃってるんだよね〜別々でも最後に同じところにたどり着いちゃってさ!そこでもう仲直りするっしょ当然!そこで3人協力のもと大技繰り出し!めちゃくちゃ大団円〜〜〜〜〜!!」……自分で書いてて馬鹿みたいですが、本気でこんなものでした(この状態では「この話は何話くらいになるのか」などという問いには答えられないというのがおわかりになるかと(笑))。
この話では初めて“プロット”を作った、ということは言いましたが、それはあくまで行動…いわゆるタイムスケジュールの部分しか触れていないレベルのものでした。具体的に言うと「とにかくここでカルロスから何か言われてオスカーは自爆装置へ。そこでオリヴィエと合流、仲直り」とか(笑)そんなことしか決まってない。“何を”“どんな風に”言われたか、“どういったやりとりで”仲直りをするかっていう部分は敢えて決めず実際原稿を書く段に、自然と「会話」の中で展開させていくいつもの方法をとりました。
これはたぶん書き方としては非常に時間的効率の悪いやり方だとは思うのですが、ある程度詳細にプロットを作ってしまったら、それだけで何かやり遂げたつもりになって満足してしまう、あるいはそれだけで力つきる(笑)可能性が高いと踏んだのです(<私の根性無しはそんくらい根深い)。
この書き方だと原稿を書いている間、自分も楽しめます。今回一番驚かしてもらったのはカルロスおじさん。18話にオスカーが「そこまで知ってるアンタ何者だ」と問うシーンがありますが、ここでこの方がまさか「俺が作ったんだよ」と言うとは!このとき、きっとオスカーより、書いた私の驚きのが上だったはず(おいおい)。
あとは「喧嘩」のくだり。想定では三人ともに喧嘩腰になっていただきたかったのですが、どこをどー展開させても「争いごとは…嫌いだっつってんでしょうが!!」とあの方だけは参加してくださいませんでしたねえ…さすがだリュミ様…愛してます(<いきなりコクってんなよ)。そんなあなたに炎夢を乗せてのドライブをさせてあげられなかったこと、今でも申し訳なく思っております…まあいいか、トップ絵でやってるし。この話のあとであのイラスト、なんて想像をすると妙に楽しいぞ…。横道でした、戻ります。
反対にオリヴィエは今回随分乱暴者…になってました。ま、シーンとしては無いですが、それ以上にオスカーは乱暴を働いていた模様。リュミも「喧嘩」はしてくれなかったが、アッパーはかました…とうとう直接手を出させてしまった(^^;。ああ、どうして私はこうも彼らを暴力主義者にしてしまうのか。これは本気で未だに謎です。
書き終わった後、今までにない長さになったことの理由はわかりました。これ、要は通常の三本分だったんですよね…。『三人三様』というのをしっかり書きたいと思ったら、三人分書いちゃってたっつう。なぜプロット段階で気付かないんだよ…。今後の課題にしたいと思います、はい。
最後にムービーのことを少し。元々、こういうものを作るのが凄い好きで今までも趣味的に作ってはWONと互いに交換とかしてまして。ワタシ的には小説書くより好きかもしんないと思うくらいなんですが(笑)、そこがフクザツなところで、こんな短いムービー作るのでも、どうしても「物語」が欲しくなるんです、私の場合。台詞がついて、それにあった絵素材があって音楽がついて、ってのがやりたい。となると、小説書くのが先ってことになっちゃうんですよ、必然的に。
『ガジェット』という話は、実は「なんか新しい中堅ムービー作りたいなあ…スピード感があって、テクノっぽい音がついてるやつ!」というところが最初です(テクノだからSFで3D…なんと安易)。あのムービーが、WONバージョンが話の全体感を総括した感じのものであるのに、反して私の方は「予告」っぽいのは、そうした経緯があるからだと思われます(WONは話を全部読んでから構築したイメージで、私の方は話つくる前に考えてたイメージを後から話に合わせて作り直した、という。ベクトルが真逆)。
ムービーにまで嬉しい感想をいただいたりしたので、また作りたいなぁ、などと調子に乗ってる岸田です。
そんなわけで、てんやわんやの初連載。裏方も表方も今までにない経験をいっぱいしました。何より足繁く通ってくださった来訪者の皆様の感想等、毎度毎度楽しく嬉しかったです。連載終了時は、皆様と一緒にマラソン走りきったような達成感さえ勝手に沸き上がって、感無量でした。
これだけ長いといろんなことが書けて楽しかったというのはありますが、やはりそうそうこんなのは(性格的にも体力的にも発表形態においても)書けないので、いろんな意味でこの『ガジェット』、特殊な位置づけになるでしょう。ま、書ける時に書けて良かった、という感じです(笑)。
とにもかくにも、読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!!そして今後ともよろしく!って図々しいぞ!(笑)