STONESのデビュー前、そしてデビュー後、ブライアンはSTONES一ハンサムな男だった。
女性に対し暴力的趣向を持っていたにもかかわらず目のまわりに青アザを作りながら女たちはブライアンに群がった。そして彼は、そんな生活をあますことなく満喫していた。
しかし、次第に私生活とバンド活動の満足度のバランスが崩れ(あいかわらず人気はあったが、バンド内で孤立を味わうようになっていた)、そのことがブライアンの精神面を犯していくことになる。
ブライアンはほとんどSTONES内ではのけ者扱いだった。
1965年ミュンヘン。ブライアンはアニタに出会い、彼女にぞっこんになる。STONES内で、自分の立場をあやうんでいたブライアンだったが、アニタをガールフレンドにできたことで世間の脚光と仲間内の嫉妬を感じることができ、再び元気を取り戻す。
しかし彼がかかえるSTONES内の問題は、アニタの愛でさえ、和らげてはくれなかった。逆にアニタとの生活によって、ドラッグに溺れ、暴力はますますエスカレートしていった。
「自分が作ったバンドが有名になり、ファッブな女を手に入れた幸せなブライアン」とは、周囲の人間が思うだけで、ブライアン本人は、このときこそが最も辛く寂しい時期だったのだろう。
そして1967年、とうとうアニタはブライアンからキースへ乗り換えた。ブライアンを残し、キースといっしょに去って行った。
それでもアニタを愛していた彼は、再会する度に復縁を迫るが相手にされず、(表面的には)諦めるしかなかった。が、ブライアンがアニタをまだ愛していることは、誰の目からも明らかだった。
その後のガールフレンドは、アニタのいない寂しさをまぎらわすためだけに必要だった女性関係だったような気がする。
アニタ以降ブライアンは外見が自分(というか、アニタ)に似た女性しかガールフレンドにしなかったようだ。
ブライアンにはこの世に残した子供が何人もいるという。しかし、一番(と言うか唯一)愛したアニタとの間にはいない。
ブライアンが亡くなった1969年7月3日は、STONESからの解雇を言い渡されてから1ケ月ほど後のことで、そのときアニタはキースの始めての子供を妊娠していた。……………………
ブライアンの人生を深く知れば知るほど、ブライアンがSTONESに残したあらゆる面での影響の大きさを感じてしまう。そんなブライアンに当時のミックやキースが接した態度に関する証言を見ると、何ともいえない思いが私を支配することもあるが、ブライアン、ミック、キースの微妙な均衡関係がSTONESのサウンドやイメージを生みだしていったのだと納得するしかない。
ときにミックやキースだけがブライアンを苛めていたというイメージが全面にでてしまうこともあるが、ブライアンとミック、あるいはブライアンとキースが組んで残りの一人を苛めていたという証言もあり、とにかくSTONES内は常に複雑だったようだ。
STONESがらみの本を読み返すたびに悲しくなってしまうのは何故だろう。