++ BIGCAT NEWS 12

NO.12 「獸木さんちの山料理」 1999年11月号

ウイングスができてそんなに経っていないころ、新書館の関口編集者が、ウイングスにキャラクターの絵はがきを折り込んで、裏に漫画家がレシピを入れるという変な企画を考案し、わたしと誰かもうひとりくらいが書いて終わったということがありました(関口さんはよくそういったすぐ消える企画を時々単発していた)。
わたしは確か、じゃがいものゆでたのをニラとサワークリームで食べる料理を書いて、「えらいおおざっぱですね」と読者の人にほめちぎられた覚えが・・・

料理に対するおおざっぱさには、わたしが仕事で論理性と体力を使い果たすので、私生活にはヤマカンといい加減さしか残らないという理由もありますが、一方これはいわゆるファミリー・トラディッション。
実はわたしの母はとっても料理上手なんですが、自分の料理のことをいつも「山料理」と言っていました。「山料理」のほんとの意味はよくわかりませんが、母としては「ワイルドな」「おおざっぱな」「どんぶり勘定な」というような意味で使っていたのだと思います。
もちろん母の料理はどれもすばらしくおいしいので、味がおおざっぱだったり、いいかげんだったりしたためしはありません。
じゃあどこが「山」なのかというと、彼女は実は作り方が全部自己流で、分量なども大体カンで決めているのでした。わたしが作り方を教わろうと、「これの分量はどのくらい?」と聞いても、いつも「わからない」という返事。

上の理由と食生活の違いで、わたしは母のレシピは一個も受け継ぎませんでしたが、職業柄さらに簡略化された「山料理」を作るようになったのでした。
で、今回はうちのレシピを一挙公開します。「山」だからといってあなどってはいけません。空腹な人にはとってもきつい、本能に訴えるダイレクトな企画なのです。

うちのレシピの特徴としては
ものすごく早くて、下ごしらえなどがほとんど要らない
工程が少ない
野菜の皮をむかない
(作業を簡単にするためと栄養価の維持のため。たわしや金たわしで洗えばたいがいの野菜はOKですが、もちろん皮のきらいな人はむいて作っていただいて結構です)
電子レンジを使わない
(これは単にわたしが電子レンジを信用してないので家に置いていないから)
やたらと緑黄野菜を使う
白い砂糖でなくはちみつやブラウンシュガーを使う
(これは自分が肝臓が悪くてアレルギーを起こすからです・・・でも万人の健康にいいと思う)
といった点があります。
材料の分量の書いていないやつは、好きなだけ入れてください。お肉好きな人はお肉いっぱい、野菜好きなひとは野菜いっぱいでOKです。
あと、調味料は、分量を書いていないので(材料の分量もお好み次第なので書けん)、好みで加減してください。塩と、辛いトウガラシ類は味を見ながら入れると失敗しません。

今回は、自分の定番の中から、特に簡単で失敗が少なく、日本で簡単に食材が手に入り、オーブンとか特殊な料理器具がなくても作れるものを選んで紹介します。
うちに遊びに来ていた人は、必ずどれかは食べさせられてるはず・・・
作り方が単純で文章も短くてすむので、けっこうたくさん紹介できそうです。特に忙しい人、試してみてね。

 

●ニンニクとくるみのスパゲティ
この料理のいいところ/
うちでは誰かが風邪をひきそうになるとこれを作ります。なにしろ生のニンニクと緑黄野菜たっぷりだから、体に良い上、もりもり食欲のわく味なのです。
ニンニク臭の気になる時は食べたらコーヒーを飲みましょう。歯を磨いても消えないニンニクの匂いもコーヒーで消せます。材料はこれで2〜3人前です。

作り方/
すり鉢でくるみ両手にひとすくい、ニンニク3〜5かけ、パセリ一束か同量のホウレンソウ、トウガラシ、塩、コショウ、オリーブオイル(やったことないけど植物油でも代用できるかも)、好みでローズマリー、タイムなどのハーブをよくすります(フードプロセッサーとかにかけてもいいのかも)。好みのかたさにゆでたスパゲティを和えてできあがり。

●獸木さんちのヴィシソワーズ
この料理のいいところ/
フツーのヴィシソワーズと違っていろんな野菜を入れるので、ユニークな色になりますが、栄養は保証付き。水やミルクの量をぎりぎりに押さえ、クリームの量をケチらないのがコツ(濃度があったほうがおいしい)。
かなりリッチな一品なので、これとフランスパンくらいでおなかいっぱいになります。あたたかくても冷たくてもおいしいので、初日はあったかいのを食べて、翌日は冷たいのを食べてもいい。じゃがいもを全部かぼちゃにかえると、クリーミーなパンプキンスープになります。パンプキンスープはナツメグをどっさり入れるとおいしいよ。

作り方/
じゃがいもを中心に、セロリやニンジン、ホウレンソウなど、残り野菜を適当に切ってひたひたの水でやわらかくゆで、何等分かずつミキサーに移し、ミキサーがスムーズに回るくらいミルクを足してなめらかなスープ状にします。カップ2分の1〜1弱くらいの生クリームを加え、塩コショウで味をつけ、沸騰寸前まであたためます。

●エスニック・カレー
この料理のいいところ/
残り野菜などを使ってできる栄養満点の料理です。何日か食べられる上、鍋いっぱい作って半分を冷凍しておくと、忘れたころにまた食べられてとても便利。材料はなんでも好きなだけ使ってOKですが、ショウガは多すぎると辛いので注意。セロリ、なす、ニンジン、ブロッコリー、ホウレンソウなどなんでも入れられますが、このカレーでは野菜は細かく刻んだほうが、すてきにできます(例えばニンジンやピーマンなどのあまり人気のない野菜や、じゃがいもなど後から味の落ちる素材を大きいままごろごろ入れるのはお勧めできません)。特に刻んだ椎茸はミーティでおいしいので、絶対入れましょう。
ごはんは普通のごはんでもおいしいですが、玄米やココナツやクローブを炊き込んだり、クスクスで食べてもナイスです。エスニックカレーのペースト(グリーン、レッドカレー・ペーストなどという名前で売っていると思います)、ココナッツミルクは外国食材のお店やコーナーなどで買えます。

作り方/
ショウガ1かけ、にんにく、タマネギ1、2個をみじん切りにしてよく炒め、鶏肉(手羽元、手羽先などがおすすめ)を加えて炒め、トマト、椎茸ほか好みの野菜を刻んで鍋いっぱい近くまで入れ、ココナッツミルク一缶を加える。市販のエスニックカレーペースト(グリーンカレーがおすすめ)を加え、煮立ったら弱火で30分くらい煮て、レモン汁、塩などで味を整える。

●チーズフォンデュ
この料理のいいところ/
チーズフォンデュはフォンデュ鍋がないとできないような気がしますが、台所のコンロと普通の小さいなべで作って、固まってきたらまた暖めれば充分できます。
ふつうはエビとかパンが主役の料理ですが、野菜なんかを取りあわせるとバランスもよくて、大人数でもたっぷりの量になります。とてもお腹がいっぱいになって暖まる、冬向けの料理です。
はんぺん、かまぼこというとこがうちのオリジナルですが、すごく合うんだよ、これが。酒飲みにもおすすめの料理です。

作り方/
市販のチーズフォンデュミックス(もちろん正規のチーズフォンデュのミックスを自分で作ってもOKです)を、潰したニンニク1かけといっしょにナベに溶かして、一口大のはんぺん、かまぼこ、ブロッコリー、カリフラワー、生のマッシュルーム、フランスパン、エビのゆでたのなんかをつけて食べます。他にも好みで材料を工夫してみてね。

●ハンバーグ&パセリソース
この料理のいいところ/
ふつうのハンバーグなんですが、ちょっとソースを工夫するだけで野菜もたっぷりとれて、比較的気の利いた一品になります。タマネギをよーく炒めるのがコツなので、そこは手を抜かずに。ソースで食べるので、ハンバーグの塩味は控えめでOKです。ここで使う刻んだパセリは、少量をスクランブルエッグなんかに入れてもナイスです。

作り方/
(肉や野菜の分量は通常のハンバーグを参考にしてね。一応3人分くらいを目安に書いてます)牛豚合い挽きをボールに入れ、よく炒めて適当にさましたタマネギのみじん切り、卵一個、パン粉片手にひとすくい、塩コショウとたっぷりのナツメグ。そしてパン粉の上にちょっぴりのミルクをかけ(パン粉を浸す程度)、ぐんぐん押しながらよーくよーくこねます。比較的お団子状の楕円形にして(あまり平べったいより丸っこいほうがひっくり返しやすいです)、真ん中にへこみをつけ、こんがりおいしく焼きます。
ハンバーグをとりだしたら、焼き汁に好きなソース(ブルドッグの書いてあるソースとかそんなやつ)を好きなだけ入れ、火を止める前に刻んでおいたパセリ一束を加えて小さくなるまで炒めます(すぐ縮むので炒めすぎないように)。これをあつあつのハンバーグにかけてできあがり。

●ナスのミートソーススパゲティ
この料理のいいところ/
市販のミートソースをスパゲティにかけるのとほぼ同じ手間で、かなり幸せな夕餉のひとときを過ごせます。量もミートソースそのものの分量より一人分は増えるので、急な来客の時とかも便利です。ナスがとってもおいしいです。

作り方/
ナスの輪切りたっぷり(一個以上)を基準に、好みでパセリ、タマネギなどの残り野菜を刻んで炒め、市販の缶入りなどのミートソースを加え、ぐつぐついわせて、スパゲティにかけるだけ。溶けるチーズ、パルメザンなどでさらにリッチな味になります。

●ニンジンとカッテージチーズのサラダ
この料理のいいところ/
わたしはひとりのとき、サラダを食事代わりに大量に食べるのが大好きなんですが、これは特にお気に入りだったサラダです。ニンジンがいっぱい食べられて、低カロリー高タンパク(たぶん)のカッテージチーズもたっぷり。フレッシュで、もりもり頬張っていると草食動物の気分が味わえます。

作り方/
ニンジンの千切り(細く細く切れる器用な人は包丁を使っても切れますが、わたしは野菜の皮むき器で一本全部をそいでいました。ぺらぺらで、しんなりするので食べやすいです)をサラダボウルいっぱいくらい入れ、カッテージチーズ(市販の入れ物の半分からそれ以上くらいの量)をのせ、たっぷりのマヨネーズと好みの量の酢をかけて、まぜあわせて食べます。好みでクルミとか、レーズンを入れてもOK。

●カッテージチーズのケーキ
この料理のいいところ/
市販のチーズケーキほど甘くなくて、さっぱりした味。お昼がわりなどにも食べられて、わたしの好きな濃いコーヒーなんかとよく合います。日もちして何日か食べられ、冷凍もできますが、ビスケットの台がしんなりしてくるので、当日がいちばんおいしいようです。実はこれと上のレシピは、カッテージチーズの味が違うので、オーストラリアでは作ってません。作った人はわたしの分まで楽しんでね。

作り方/
胚芽ビスケット(マクビティとか)パッケージ半分くらいをボウルに入れ、すりこ木などで細かく砕き、溶かしたバターか固いマーガリンを加えてよくまぜ、パイ皿に敷き込みます。
カッテージチーズ1パックと、室温に戻してやわらかくしたクリームチーズ一箱の半分くらい)、好みの量のはちみつ、ラム酒ちょっと、好みでシナモンを加えてよく練り、ビスケット台の上に流し込み(実際は流し込むというほどやわらかくないです)、冷蔵庫で数時間冷やして台が適当に固まったら食べられます。好みでレーズンやブルーベリーを入れてもOK。

●ごまだれラーメン
この料理のいいところ/
ラーメンは実は苦手な食べ物のひとつなんですが、息子は大のラーメン好き。なんとか健康的なメニューにしようと結構腐心した結果、こんなのになりました。

作り方/
ニンニクのみじん切りと、豚挽肉を炒め、チンゲン菜など青菜も入れて炒めます。すりゴマ (自分で作ってもいいですが、市販の瓶詰めのやタヒニなんかが便利です)をたっぷりを加え、ごま油、醤油、コショウなどで調味し、普通に作った醤油味ラーメン(さすがにインスタントはだめかと思います・・・ゆでるやつね)の上にかけて食べます。
ゴマ風味の変わりに、ニンニク、豚挽肉、ニラのみじん切りを炒めて醤油で調味したニラ挽肉ラーメンもイケます!


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