●第1話「ナッシング・ハート」と対をなす、アンディ・グラスゴーの子供時代の物語。
舞台は冬のニューヨークから、はるか彼方のアフリカ・タンザニアに移り、オロキルク族の娘オクヨルンを主役に、母親の死のショックから人間に心を閉ざし、ライオンと暮らすことになったアンディと父親サミエルの葛藤を描いている。
主役オクヨルンのキャラクターのおかげで、少々アクション活劇風の仕上がり。完成度はともかく、「オールスター・・」などと並んで、比較的男性的なさっぱりした作風は、結構作者の好きな路線だ。
いずれも突飛な経歴を持つPALMの主役たちの中でも、最も変わったアンディのバックグラウンドや、アフリカでライオンに育てられるという設定はあまりにも漫画チックだが、これらは後にPALMのテーマと重要な関りを見せるようになる。
/★★★★
制作エピソード/
この作品は、単行本用に書き下ろされたもので、雑誌掲載はされていない。
次話「あるはずのない海」の連載用本描き開始が1984年の6月だから、「あるはず・・」連載進行中片手間に描いたものだろう。
幼年期からアフリカ(といっても国や地域・文化ではなく、動物や自然、ワイルド・ライフの拠点としてのアフリカのイメージ)にあこがれ、理想郷としてきたわたしは、PALMのパートにアフリカを盛り込み、プロの作家としてはじめてストーリー化することができて大喜びだった。
その上、人間の衣服を描いたり(わたしは基本的に、人間は裸で描くのが好きです・・・)、車や建築物の幾何的な線を定規で描いたりするのは今でもたいへんなストレスだが、この「胸の太鼓」にはそういった難関がほとんどなく、非常に簡単に描けた作品としても思い出に残っている。
Feb.1998
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