●探偵物や、当たり障りのない学園物から大河物路線に戻って来た作品。
ジェームスの刑務所時代と、出所後の殺人鬼サロニーの出現を描いている。
モダン・ホラーとまで言われたサイコな話で、決して楽しい読み物とは言えないが、PALMや人間のネガティブな側面、殺人鬼サロニーのキャラクターなどを、かなり徹底して追及しており、特に後半の描写には鬼気迫るものがある。
/★★★★
制作エピソード/
「星の歴史」は作家としても個人的にも学ぶことが多く、ひとつの転機となった作品だと思う。この作品以前は自分が誰かを知らず、作家ですらなかったとも言えるだろう。
このころは子供が小学生になり、創作環境が安定していたので、実際の制作は楽だったが、話や絵柄のテンションが異様に上がったので、特に担当者(この作品までは関口さん)は少なからず気をもんだらしい。
PALMは全作品を通じて基本的にはシリアスなドラマだけれども、笑いを愛する作者の嗜好と「本当のシリアスはコメディ(本当に大変な人生では、笑えないと生き続けられないから)(あるいは馬鹿に深刻ぶってる話ほど滑稽)」というポリシーによって、どんな話にもかなりふんだんにギャグが盛り込まれている。ただその比率は作品によって違っていて、今のところこの「星の歴史」のコミックス3巻目が、最もギャグの少ないパートとなっている。約200ページ中たった2個所。
割に物事を冷静に見る友人が、「こんなにシリアスだけど、考えてみたらギャグの比率が違うだけなのよね。」と、ぼそっと言っていたのが印象的だった。
なお、殺人鬼サロニーのキャラクター・デザインは、「爬虫類のようなイメージ」ということで連載当初は少々上唇などを強調してごつい感じに描いていたのだが、物語の暗さとバランスを取るため、コミックス出版時にすっきりした美形タイプに描き直した。本作品内の彼の首から上は、ほとんど全部、切り張りですげ替えられたものである。
Feb.1998
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