Poems written by Yasay Kemonogi  

PALMシリーズ第9話「蜘蛛の紋様」でロゼラが口ずさむ詩の数々の全文。





空っぽの海
18時の詩
ホチキスの木
僕は何も知らない
死んだこども
駆け回る生きもの







空っぽの海

空っぽの海  空っぽのそら
みんな黙ってそこにいる
    いつまでも同じように
はるかな沖を見つめてる

    箱舟 箱舟
どうか迎えに来ておくれ

空っぽの海  空っぽのそら
みんな黙ってそこにいる
風の中
黙って沖を見つめてる

早く迎えに来ておくれ

空っぽの海  空っぽのそら
それだけが灰色に横たわっている
いつまでも
    同じように

           作者14歳当時執筆


18時の詩(うた)

信号機の色が落ちて
人々が歩み始める
青い青い夕暮れ
僕を泣かす

歩きながら夢を見れる
そんな時間が確かにある
縦に横に流れる
赤や黄色の電光

誰もが魔法の蓋の中
みんな魔法の蓋の中 
ビロードみたいな手触りの
青い青い青い青い
蓋の中

信号機の色が落ちて
人々が歩み始める
いもしない人まで混じってる
青い青い夕暮れ

         Mar.18.1978(17歳)オリジナルより2行修正


ホチキスの木

ホチキスの木がありました
地平線の見える草原のまっただなか
大きな傘のように
枝といえば星まで届くほど
金や銀のホチキス実らせて
    ああその枝は
月にからむほど

ホチキスの木がありました
緑だけが広がる草原のまっただなか
ホチキス実らせて
枝といえば星まで届くほど

金や銀のホチキス摘みとって
    ああ人間を
つないでしまえれば

       作者14歳当時執筆/在籍中学文集に掲載


僕は何も知らない

電車の扉が閉まる
何か忘れ物をしたような気になる
そして僕は思い当たる
自分が死んでしまったことに

遠くで足音がする
でなければ地上で、する
僕の穴のはるか上の大地で
人々の行き交う足音がする

食べても、食べても
おなかがいっぱいにならない
そんな日が三日続いた
走っても笑っても
おなかがすいてこない
そんな日がさらに三日続いた

もう胸は踊らない
涙も失せてしまった

そんな一週間が一ヶ月続いた
そんな一ヶ月が一年続いた

電車の扉が閉まる
何か忘れ物をしたような気になる

かつて僕のいた景色が
そして今も僕のいる景色が
地平の彼方にすべりこんでいった

遠くで靴音がする
遠くで人々の声がする
遠くでサイレンが鳴っている

人々は歩みを止める
僕は何も知らない

    June.23.1977(17歳)
    ポリティカル・インコレクトのため、タイトルのみオリジナルより変更


死んだ こども

こども
死んだこども
死んでは還るこども
    飛びたつこども

ある日突然
街が泥色に染まり
魔法玉の銀ぎせは はげ落ちて
何もかもが凍りついてしまう

そしてまた風車がまわり
季節がひとめぐりし
戻って来る
きれいな歌が
    遠くから、遠くから

    まわれ、まわれ風車
死んだこどもが歌うように
死んでは飛びたつ こどものように

            作者15歳当時執筆


駆けまわる生きもの

駆けまわる生きもの
とらえられない日の光
地球の大気の外側を
回っているだけの
お前・・・・

ここにおいで
ほんの少しの間だけ
何万年かの飛行を休止して
お前の鼓動を聞かせておくれ
わたしの行進の小太鼓を
わたしが正しく歩けるように

駆けまわる生きもの
足音だけの鹿
ただきらきらと
金のかけらをふりまいて
それはわたしの目に
血に染まった体中の肉に埋め込まれ・・・

ここにおいで
お前が誰かを教えてあげる
ここにおいで
ほんの少しの間だけ

お前もどこと知れぬ空間(そら)をさまよい
孤独で
いるのなら

            Nov.17.1979(19歳)オリジナルより2行削除

  サイト更新 June.2012


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