「あるはずのない海」の連載最終回で突然加筆となった数枚のカラーページのためにデザインされた、予定外の間に合わせキャラだった(WORKS/「あるはずのない海」参照)。これが後に主役の相手役にまで昇格。文字通りPALMのシンデレラ・ガールである。
●性格・感情
シド・キャロルの性格ストラクチャーは意外に込み入っている。最初アンディらの教師として登場した彼女は、おしとやかで控えめで適当に物分かりのよい典型的な大和撫子(?)タイプ。つまりオーガス家のような火山地帯からは遠く離れた草原で、平和に草をはみながら噴煙をながめる草食動物みたいなポジションだった。
だんだんとオーガス家と昵懇になってきた牝鹿シドちゃんは、火山の高熱と硫黄臭にまみれて今度は果てしなく不安で自己否定的な「あたしなんか」キャラに。そして火山の爆発と共にブチキレ、居直った彼女は草食動物なんかやめて、火砕流も物ともしないビーストへと変身を遂げたのであった。
作品中で、他のキャラクターから「カーターに似ている」と言われていた彼女、なるほど凝ったお菓子みたいに性格がいろんな階層に分かれているところは彼そっくり。
感情の起伏も激しくて、一人悩んでメソメソしているかと思えば逆ギレしたりと、これまた誰かさんみたい。
ただ女性キャラだけあって恋愛なんかで観念的独白の世界に入ると、情念の人カーターにも追いつけないような独走を見せる。最初はシドちゃんの少女漫画チックなモノローグをおもしろがっていた作者も最初のコーナーで早くも疾走する彼女に引き離され、「そんなことより地球環境の心配でもしろよ。」と捨てゼリフを吐いたとか吐かなかったとか。
●頭脳・ウイット
シドちゃんは先生。当然学識豊かだが、いろんなことを知ってるのに、簡単・肝心なことがなぜかいつもすんなりわからない、ちょっと融通の利かないスクエアな頭脳の持ち主だ。
ジェームスとジョゼに「あんたは幹より枝葉に着目するタイプ」と痛いところを突かれていたが、考えてみれば世の中の人がみんな幹にばかり着目しても枝葉が寂しくなろうから、むしろジェームスたちはシドちゃんみたいな人に感謝すべきかも知れない。
そしてまじめなシドちゃんは、なぜか全然ユーモアのセンスがない。よく似たキャラのカーターや、あのアンジェラでさえ面白いセリフを連発するのに、笑いに関してはPALMキャラにありえないほど淡泊だ。まあ付き合ってる彼氏がコメディアンだから、シドちゃんがあまり面白くても釣り合いがとれないけどネ。
●特技
地味だけど、シドちゃんは恋に役立つ独自の得意技をたくさん持っている。もじもじしながら写真をおねだりしたりしてスローハンドの彼氏からまた合う約束を取り付けたり、お上品な口で必死にサンドイッチにくらいついてポーカーフェイスの彼氏から笑いを取ったり、果ては嵐の中に泣いて飛び出して、押しても引いても動かない岩石のような彼氏のハートに火をつけたり、ほとんどシドちゃんの技と努力だけでゲームを進行させられるほどのテクニシャンだ。ってこれって彼氏がダメなんじゃん?
●究極奥義
平手打ち。しかもすべて空振りで、後からあやまったり、くやしがったり、再挑戦予告をしたりしてゲーム展開を盛り上げる。むやみに大振りするだけでなく、相手を見てバントや犠牲フライも試してみてはどうか?
●服装/センス
最初は黒縁眼鏡で現れて、アイリーンとどっこいのやぼったい女の典型かと思ったのに、後半洗練されたキャリアウーマン風に大変身。そういえば初期の姿はスーパーマンが世を忍ぶ仮の姿にちょっと似てたけど、もしかして変装だったんですか?
●人相・身体チェック
肌・白色、髪と目・栗色。眼鏡とひっつめ頭で最初はわからなかったが、お目々が大きく、まつげバサバサで、瞳には星の輝くかなり少女漫画チックな容貌。ほどほどにカールした髪もお姫さま風。そしてシドちゃんは、身長がカーターくらいで女性としては結構大柄、しかもかなりグラマラスという評判。典型的な茶髪美人なのである。
●体力チェック
「女ってのはつくづく頑丈にできてるもんだな・・」というフロイド・アダムスの一言が彼女の体力を物語っています。
●お歳はいくつ?
重大発表があります。実はシドちゃんはあのエティアス・サロニー様と同い年。そう、同じ年の生まれなのですね。知りませんでした・・・。ちなみにジェームスより7歳年上、カーターより4歳年下です。
●占いデータ
ライフナンバー6、太陽宮乙女座、月の位置獅子座、ヘビ年生まれ。控えめな乙女座生まれなのに時々大胆な行動に出たり、負けん気とプライドに充ち満ちていたりするのは、獅子の月と、あけっぴろげなライフナンバー6のせいでしょう。ぱっと見ただけでも、人知れず粘り強そうな配置です。
●そこまで言うか
恋愛には普通どこかで「告白」という段階が存在するが、運悪くこの段階を乗り越してしまったシドちゃんとJ・B。
好きなのは本人たちはもとより周囲も重々わかっている状態のまま、それ以上先にも進めず生殺しにされた彼女の究極の告白は、カキのおいしいレストランでブチまけた、あの一連のセリフだろう。
あまりに赤裸々でしかも長かったので、ここで再現しようにも思い出しにくいのだが、「好き」とか「愛してる」とかいう生やさしいセリフでなかったことだけは確かだ。
とにかくあの鈍牛ジェームス君の重い腰を、「そこまで言われちゃ仕方ねえなあ」と、ついに上げさせるに至ったほどの、捨て身のタンカでございました。
PALM
THE WORLD/花の贈りもの
○THE WORLD「花の贈りもの」のドロシー・ソネリー役では、ホワイト・ワイルド役のジェームスと念願の結婚生活を実現。老け役ながらかなりおいしい役どころでした。
●作者ひいき度
獸木がキライな人間の3大タイプは「理屈っぽい」「議論好き」「批判的」。オマケに「優柔不断」「愚痴っぽい」「マイナス思考」なタイプもかなり苦手。それらの資質をすべて備えたシドちゃんはハッキリ言って、近くにいたらとてもウザい女に違いない。
そんなシドちゃんを好きなジェームスはやっぱり器が大きい?ていうかやっぱりちょっと悪趣味!?
●読者の評判
PALMのスーパースター、ジェームスの彼女になったということで、彼女に移入できた、できなかったかによって評価はぱっくり分かれた。移入できた方からは、彼女の独白にダブる心理体験談を多数いただき、移入できなかった人からは「胸の大きささえも気に入らん」という評価も。
2003年8月
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