1993年ごろ、「愛でなく」連載の前半に、短編「星を残して」のヒロインをデザインし直して誕生した非常に新しいキャラ。
実は「愛でなく」の制作を始めたとき、中盤でビアトリスに振られてしまうフロイド・アダムスがあまりにかわいそうなので、そのあと恋の相手となる女性が現れるという展開を想定したが、連載開始時には名前のみでキャラデザインや設定が出来ていなかった。
このいわゆる「受け皿キャラ」が、「愛でなく」以降に登場する「PALMの作者」のダミーを兼ねた心霊キャラ、ジョゼ・ルージュメイアンとして思いがけずレギュラー・キャラ・クラスに台頭することとなる。
ルージュメイアンの「人の心を読む」という設定は、前作「オールスター・・」でアンディがジェームスの心の声を聞きとれるようになる、というエピソードのあとで、実際にある女性(そういえば彼女わたしの作品を読んだことがありません)にそういう能力がある、という告白を受け、彼女としばらく付き合った経験を元にしており、人の心が読めてしまう人がどんなキャラクターになるか、どんな言動をするかといった描写に挑戦するのは、物書きとしてちょっとわくわくする体験だった。
実はこの心の声を聞く知り合いについて、偽名でとある心霊サイトに書き込んだことがある(いつもそんなイケナイ遊びをしてるわけではありません・・・それ1回こっきり)のだが、そのときの文章をこちらにアップしておいたので、興味のある方はご覧ください。
●性格
何を考えているかわからない女の代表格。ジェームス・ブライアンのキャラを踏襲しているということで、どっしりとした、落ち着いた、無表情な、鉄面皮、味気ない、不気味、といったイメージを一通り備えているが、霊感体質で人の影響を受けやすいため、その場にいるメンバーによって、性格にもムラが出るらしい。
気の強いフロイドといると強気になったり、イジワルなフォアウッドと対決すると、相手に負けないくらいイジワルになるなど、相手の個性がそのまま移ってしまうだけでなく、相手に持たれたイメージから抜け出せなくなる傾向もあるようだ。フロイドのおじいちゃん、アレックには「おとなしくて従順な子」と思われているため、彼の前ではどうしてもおとなしくなってしまったりする。
●感情
ジェームスと同じく一見無感情そうな彼女だが、女性だけあってか、内面はジェームスよりさらにセンシティヴ。フロイドにいぢめられたりして傷つくと、方向感覚を失って柱にぶつかったり、さらには実体がなくなりそうになってしまったりする。
●特技
ルージュメイアンは人の心を読む、未来・過去を見るという心霊特技の持ち主。人呼んでPALMのぎぼあいこ(すみません、字がわからん)。
彼女の得意技は、人の心や未来を見通しての「先回り」。カーターなどが相手だと、変則話術で相手を翻弄するジェームスも、「話題を変えて逃げ切ろうとしてるでしょ」などと立ちはだかられて立ち往生。
なにか事が起きそうな時も先手を打てるし、時には「今夜このレストランで食事させれば二人(ジェームスとシド)は結ばれる」なんて反則技もやってのける。
ただ過去や未来のすべての時間を順不同に体験してるための記憶の混乱や、他人に影響されやすいがための性格の混乱など、デメリットも多いようだ。
●言葉遣いチェック
人の心を読む彼女は、人の口から発せられた声ばかりでなく、心の声とも対話する。だから例えばジェームスとか、通常無口なキャラが相手の場合は、心の声にばかり応答して、彼女が一方的にしゃべってる場合も多い。またすべてをスケルトンにしてしまう透視能力のため、いやおうなく会話はざっくばらんに。
言葉遣いそのものは、日本語なので女言葉になっているが、英語などだと、ジェームスと寸分変わらないと思われる。
●究極奥義
殺しても死なない。
この人の存在の謎は、実は作者にもよく解明されていない。とにかく普通の人間より幽霊に近いというか、生きながら半分霊界に足を突っ込んでいるような、そんなポジションにある存在らしい。
そこで時々、幽体離脱したり、ドッペルゲンガーになったり、半透明になったり、いろんなことになっているが、実体があやふやなためか、テロリストの森林貴族に剣でばっさりやられても、傷も負わなければ死にもしなかった。ちょっと聞くと無敵&ラッキーな気がするが、「自分では死ぬこともできない」とフロイドがかわいそうがったりすると、なるほど不憫にも思える。霊感があるって、たいへんなことなんだね。
●哲学&ウィット
神秘の世界の人、ルージュメイアンさんの哲学は超宇宙的。なにしろ未来や過去を見通しているので、なかなかぶっとんだ見解を披露してくれる。
「いろんな時間を行ったり来たりしてるので、いつあなたを好きになったかなんて忘れたわ。」
「確かに道は分かれているけど、彼はいつも同じ道を選ぶ。他の道を選ぶのは他の人だから。」
などなど、一歩間違えば危険な領域(もうすでに何歩か越えてる説あり)に入ってしまいそうなスレスレ加減(もうすでにスレスレもなにもない説あり)で魅了してくれます。
おそらくある程度普通の生活をしながら、同時にJ・Bを中心としたいろんな人のプレッシャーも体験してしまい、あらゆる人の心を見透かせる彼女には、ただ達観しているだけでなく、人の本質や幼い面をキャッチして吸収してしまう「宇宙のお母さん」風なところもあり、フロイドやジェームスなど、PALMでかなりがんばってる部類のお兄さんたちも、なんとなく彼女には子供扱いされて、遊ばれている感がある。
●弱点
影が薄い
ジョゼ・ルージュメイアンはどう見ても目立たないキャラではないのだが、なぜか他のキャラクターにその存在を忘れられる傾向がある。
いろんなキャラクターを踏襲した影武者的存在だからか、あまりに神秘的で別の世界に片足突っ込んでいるからか、理由はよくわからないのだが、フロイドと付き合っていながら長い間公認されてなかったりとか、逆にいきなりジェームスに同棲宣言されたりとか、よくよく考えると人権無視の扱いを受けることも少なくない。本人もそうしたポジションにすっぽり収まって、疑問を感じてはいないらしい。
さらにただ意思を無視されるだけでなく、「ジョゼって誰?」などと、存在そのものを忘れられれていることさえしばしばある。
●人相チェック
始めはカーターのそっくりさんとして登場した彼女だが、性格と同じく、顔もいろんな人とそっくりになれるらしい。人呼んでPALMの・・・もういいですか?以下の中から適当に選んでください→<二十面相・カメレオン女・イーサン・ハント>。
その気持ちの悪さに業を煮やした彼氏のフロイド君が、最終的には「誰にも似ていない顔」に変身させてしまった。でもほんと、カーターのそっくりさんの時は、二人を見分けるのに苦労しました。カーターがいつもスーツ&メガネ姿だったのが、せめてもの救い。
●体力チェック
よく怪我をしたりぶっ倒れたりするジェームスにシンクロしているため、「再生不良性貧血かなんかかと」フロイドが思っていたというほど、彼女はよくぶっ倒れているらしい。幸い、いつぶっ倒れるか予測できるので、自分でちゃんと冬眠準備を整えてからぶっ倒れるという手際のよさ。
シンクロのおかげで、みかけより力持ちでもあるらしい。
●セクシャル・オリエンテーション
この人はPALM初の女性の両刀。
登場していきなりジェームスと同棲したため全女性キャラクターの敵に回るはずだったのが、この奇特な才能でビアトリスをはじめとした小舅たちの出ばなをくじいて、うやむやにしてしまった。
当の同棲相手のジェームスはこの事実をしばらく知らず、のちに彼女のシドちゃんを取られるかもしれないという恐怖に、一瞬ではあったがおののいたようだ。
ジェームスと同棲したのをきっかけに、ゲイからの引退宣言をした彼女は、男性に対してもかなりアグレッシブなところを見せ、後の恋人フロイドちゃんに「彼女はそういう状態になったら、「頭が全部口でそれに足が生えて歩いているティラノザウルスと同じ」とまで言わしめている。「本能と霊感しかない女」という評価もあるので、あまり追求すると、霊感に関することと、この「セクシャル・オリエンテーション」の項目だけで、キャラクター解析が終わってしまうのかも知れない・・・
●お歳はいくつ?
ジョゼはジェームスと同い年(約半年年上)、彼氏のフロイドより11歳年下。そしてご存知カーター先生はフロイドと同い年。これと関係があるのかどうか、ジョゼにセクハラを受けるフロイドの姿は、ジェームスにこわいジョークでもてあそばれるカーターの姿にダブる。ふたりとも、年上キラーか?
●仲良しは誰?
いろんな人と、ある意味深い仲の彼女だけれども、一番仲よくて、楽しく遊べるのはやはりボーイフレンドのフロイド・アダムス君でしょう。殴り合ったり、押し倒し合ったり、いぢめたり、いぢめられたり、追ったり、追ったり、追ったり・・・。
何だかとっても楽しそう。逃げ惑うフロイドちゃんの姿に、男と女の真実を感じました。
●占いデータ
ライフナンバー、5。太陽宮牡牛座、月の位置蠍座、上昇宮推定天秤座。ねずみ年生まれ。つまり、ジェームスのホロスコープの太陽と月と上昇宮を単純に配置替えしたような組み合わせで、同じ干支、違うのはライフナンバーだけという、なるほどな配置。
ライフナンバー5は典型的な占い師や霊感体質の相、あの「どーん」としたどっしり感は、牡牛座独特のもの。
●
星を残して
PALM
THE WORLD(ルビー・ブラック)
○ルージュメイアンの元キャラは「星を残して」のレザミ女王様。ということは、レザミ女王様と瓜二つという設定だったケンシア君は、誰かに似てなくもないような・・・
THE WORLDのサイド・ストーリー「ルビー・ブラック」では、神秘的なイメージと猫顔を生かして、「幸運の黒猫」役に抜擢。ブラック・ワイルドのサロニー様といいコンビを見せていた。
●作者体現度
よく言っていることだが、作品のキャラクターというものはどんな端役でも、作者を体現していると思う。そうでなければ、そのキャラクターはモンタージュ写真のような単なるイメージの寄せ集めだとさえ言えるかも知れない。
ただもちろん、その時々で「特に自分を体現している」と思えるキャラクターは常にいるもので、とりわけルージュメイアンのように、別の、自分を体現するポジションのキャラクターのダミーにしようとした場合などは、自分がそう感じるだけでなく、人にもそう感じてほしいと思っているわけだから、いろいろ自分にある要素を持ち込んだりしていて、かなり自分と紛らわしいキャラにはなっている。
で、本当のところはどうなのか?ルージュメイアンは作者に似ているのか?
答は・・・似てません。
厳密に言うと、体形や容貌はルージュメイアン年齢当時の作者にやや近くしてあるけれども、性格設定がかなりかけ離れており(獸木はもっととっぽいキャラです)、何よりも作者はこんな心霊体質ではなく、人の心も読めません。最初に前置きしたとおり、彼女の心霊体質部分のモデルは、獸木の知人。万一獸木野生に会ってもあなたの考えていることは読まれませんから、安心してください。
●ルージュメイアン・ファン
ルージュメイアンはなぜかとても女性受けするキャラクター。ここに早期殿堂入りしたのも、アンジェラに次いでリクエストが多かったから。
ルージュメイアンは、めずらしくいろいろな使命を帯びて作品に登場させられたキャラクターで、その使命のひとつに「恋敵キャラになってシド・キャロルの株を上げよ」というのがあった。
「愛でなく」は一応恋愛ストーリーだったのだが、ヒロインのはずのシドちゃんが、どういうわけかいきなり「なんであんな女が!」のようなポジションだったので、他の使命といっしょにシドちゃんの恋路を邪魔する敵役も彼女に託したわけだ。
「なによあの女!」という読者の声に満足した作者の耳に、次に届きだしたのは「最初はいやだったけど、結構好き」「ジョゼも好き」「ジョゼが好き」「ジョゼが好き」「ジョゼが好き」
・・・一体どのあたりからそうなったのでしょう?中性の魅力?でもまあ、人に好かれるのはいいことです。
2000年8月
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