「これから、臨時の風紀委員会を始める」
各クラスの代表を前に、オスカーは物々しく言った。それを受けてひとりが挙手をし、発言する。
「生徒会長・・・昼休みのこの緊急召集、いったい何事なのですか?」
オスカーは即答する。
「校則改正案の委員会信任だ。俺一人ではできんからな」
「なら何故、生徒会風紀担当のリュミエール先輩も、副会長のオリヴィエ先輩もいらっしゃらないのですか・・・いったいどんな校則を・・」
「・・・あいつらは別件でちょっとここには」
そこまで言いかけた時、会議室の扉が勢いよく開いた。
「オスカー!!!!!」
その日頃温厚な微笑みを浮かべた顔にあからさまに怒りの色を浮かべた、リュミエールである。
「あ、リュミエール」
「あ、じゃありません、あ、じゃ!!!!!いったいこれはどういうことですか!私は何も聞いてません!!」
「そう怒鳴るな。皆が驚いているだろう」
「私が一番驚いてるんです!!」
「なあに、ちょっとした校則をな、プラスしようと。もちろん生徒会権限の範囲だ、問題ない」
「問題無いことありますか!そんな大事な・・・。余計に私に何も話が無いのは解せません。どんな校則なのです」
なおも憤るリュミエールに、オスカーは悪びれもせず言い放った。
「女子生徒の頭髪についての校則だ」
「女子の?・・・・・あ」
リュミエールはすぐに昨晩の出来事を思い出した。
「あなたも・・・・?実は私も同じことを考えていたのです・・・さすがはオスカー。行動が迅速ですね。恐れ入ります」
オスカーは穏やかな顔で、リュミエールの肩を叩く。
「だろう?・・・やっぱりこれからは、女生徒・女教師に至るまで耳は出していく方向で!!」
瞬時、リュミエールは自分の肩におかれたオスカーの手の甲をつねりあげる。
「いてててて!!」
「・・・・違うでしょう、逆です、逆!!!!」
「逆ぅ?何言ってんだよ」
「こっちのセリフです!!・・・ああ、もう、私など今朝から校内の女子に目のやりどころを失っているというのに・・・なんと無防備に耳をさらけ出している女生徒の多いことか、今まで意識したことなどなかったので気づきませんでした。ひとりひとりにそれとなく耳は隠すよう注意するのも限界があります、ここは校則で全校レベルにとあなたにも提案しようと思っていた矢先」
「なんてもったいないことを言うんだ!いいじゃないか、身も心もいさぎよくすっきりと全員耳出し!!楽しい学園生活を作っていくのは生徒会のもっとも重要な役目だ」
「耳を出すのは女性の決意表明なのでしょう?そんな毎日毎日のべつまくなし決意ばかりしている女性などおりません。常に耳を出していたら実際本当に決意の際にも差別化がはかれないではないですか」
「ふふん、建前はよせよリュミエール。オマエさっきなんて言った?目のやりどころに困るとかなんとか・・・決意表明云々の話の後、オリヴィエが言った方に考えがいってる証拠だ」
ぎく。リュミエールが一瞬固まる。オスカーは追い打ちをかけるように嫌味たらしく続けた。
「・・・まったくお互い驚きの事実だったよなあ、耳の形が即・・・。今後実地調査にも乗り出そうと俺のほうが決意したってもんだぜ、なあリュミエール?」
「・・・・・・・・・・・・」
「俺は嬉しかったんだぜ、オマエも一応曲がりなりにも健全な男子だってわかって。これからは素直に・・・うわっっ!!よせっ、リュミエール!!会議机を振り上げるのは!!」
(おい・・誰かオリヴィエ先輩呼んで来いよ・・・コレ俺達じゃおさまんねーよ)
会議室の隅に非難しながら困惑する風紀委員会の皆様の願いが叶った。
「はいは〜い☆呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!・・・それより『悪い子はいね〜が〜』ってほうがいいかな?ナマハゲ。鬼のコスプレも結構いいよね、今度やろっか?きゃはははは、こーんな美しいナマハゲいたらみんなさらわれる方を選ぶよねーーー!!」
「・・・・・・・・・」
頼りになるがワケはわからない。そんなヤツばっかりが仕切る当学園生徒会であった。
《続く》