「で、どうしたのさ?ああ、あの2人は放っといていいよ〜。」
ますます怯える風紀委員達に笑顔で尋ねるオリヴィエ。生徒会室の前方では、すさまじい音が続いている。
「はは〜ん、そういうこと〜!」
事のなりゆきを聞いたオリヴィエは、壊れにくい備品ばかりが飛び交うオスカーとリュミエールの間に割って入り、2人と肩を組んで何かささやきはじめた。静まりかえる生徒会室。オスカーは握っていたホウキをボトリと落とし、リュミエールは鉄アレイをゴトリと落とした。・・・そして、2人は自分の手をゆっくり見つめた。
「うわぁっっ!!!!!」っと声を上げて窓際まで飛びのいたのはオスカーだ。
リュミエールは声も出ないといった様子で顔を赤らめている。
それを見たオリヴィエはくるりと後を向き「風紀委員の皆さん、臨時風紀委員会は一旦終了。生徒会長・副会長および風紀担当のみ引き続き審議します。って担任に伝えといて」とウインクした。
昼休みが終わっても誰ひとり喋らない。校舎の端にあるクランドからボールを蹴る音と歓声が時々届くだけだ。
「ワタクシ・・・違うと思います」
沈黙を破ったのはリュミエール。
「そうしっかり見ることはありませんが、全て現われるというわけではないと思います!」
・・・リュミエールらしい、涙を誘う台詞だ。(じゃ言わせるな・・・)
「・・・だよな。俺もそう思う」
「そうでしょう?オスカー」
やっと顔を上げるリュミエール。
頷きながらも、まだ自分の手を眺めているオスカーを平手打ちし、リュミエールは続けた。
「ということは、女子の耳のカタチも同じことが言えるのではないでしょうか?」
「痛っ〜・・・そういうことになるな。オリヴィエ?」
「まっね☆」
「俺達をからかったのか?」
「いえ、そういうことではないでしょう、オスカー」
「オリヴィエ!」
「・・・まさか、こんなことで臨時風紀委員会を開くとは思わなかったよ」
オリヴィエがバツ悪そうに言った瞬間3人は笑い合った。
「俺、昨日とか眠れなかったもんなあ」
「私も・・・今まで知らずにいたショックとでも言えばよいのでしょうか・・・」
「思い当たることもあったしなあ」
と、また自分の手を見るオスカー。リュミエールが指の間接を鳴らして威嚇する。
「リュミちゃん、そんなことしたら間接大きく・・・」とオリヴィエが言いかけてオスカーが爆笑する。
「オリヴィエ〜〜〜!それ洒落になんないぞ!」
「っっっっ!!!!!!!!」
「おい!消火器はヤメろ!リュミエール!!」
何度目かのベルが鳴っても生徒会室にはフツーの男子高校生の会話が続く。
いつもと変わりなく平和な学園であった。
《続く》