リレー小説『踊るサクリア』03 by 岸田
そのテディ・ベアは、一見何の変哲もない。アンジェリークの部屋にあったものと同じもののようである。あたしは、そっとテディ・ベアに手を伸ばした。その時!
「ミツカッテシマッタヨウダナ」
テディ・ベアが口をきいた!!
「ぎゃあっ!!」
あたしは思わずのけぞり、尻もちをついてしまった。十七年間生きてきて、こんなに驚いたことは無い。
「バレテシマッタノデハシカタガナイ」
(爆発するのっ?するのねっ?)
こういう場合たいてい爆発するものだ、”自動的に消滅する”とかなんとか言って!あたしは自分がどこでそんな俗っぽい、かつ庶民的かつアンジェリーク的な知識を得たのか一瞬疑問は湧いたけど、そんなこと考えてる場合じゃないわ。瞬時に部屋のはじに逃げ、耳を塞いだ。しかし・・・・その怪しいテディ・ベアは爆発は・・・しなかった。
その代わりにあたしの目に入ってきたのは、四つん這いになって逃げていく等身大のテディ・ベアの姿だった。そして、彼(?)はドアの前で振り返り、言った。
「サラバジャ!」
目にも留まらぬ早さで、ドアを出ていくテディ・ベア。安普請の寄宿舎をドタドタと激しい音を立てて逃げていく。
・・・・あたしは、腰を抜かしてしまったらしい。ぴくりとも動けない。
「なっ、なんなのよぉぉぉぉ〜〜〜〜!!!!」
あたしの絶叫が聖地に響きわたったのは、それから数秒後だった。
《続く》
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