リレー小説『踊るサクリア』09 by 岸田
「遅い!」
炎の守護聖オスカーは大声を上げた。先程かけた緊急召集に、誰も反応しない。連絡は行き渡っている筈なのに・・・。彼はイライラと部屋を歩きまわり、側にあった椅子を思いきり蹴り上げた。
「こ・こわ〜〜〜〜〜〜い!!」
アンジェリークとロザリアは思わず手を取り合って壁際にすりよった。
そのような緊迫した状況の中、部屋の扉が開く。そこにはルヴァとリュミエールが立っていた。ルヴァは遅くなったことを詫びるのもそこそこに、話し出した。
「オスカー、大変なんですよう!クラヴィスがめちゃくちゃ変なんですよー!!」
「変ではありませんよ、ルヴァ様。あれこそがあの方の本当のお姿なのです。あの方が私に親しげに笑みを投げかけ、お茶を飲みながら芸術の話などを嬉しそうに・・・。ああ、幸せな、なんと幸せなひとときだったのでしょう・・・・」
「あなたは少し黙っててください、リュミエール!」
うっとりと語るリュミエールを黙らせ、オスカーに向かって再びクラヴィスの様子を話し出す、ルヴァ。
「・・・それはかなり変だな・・・・この聖地で何が起こっているんだ!」
クラヴィスの変調、そしてさきほどのテディベアの一件。オスカーは知識豊富な地の守護聖に意見を求めた。
「そんな珍妙な話をいきなり聞かされても、私にはなんとも・・・。他の守護聖達は何か気付いているのでしょうか?・・・あれ?ジュリアスは?こんなことになったら凄い勢いで飛んできそうなものなのに」
「ジュリアス?・・・・ああ、確か光の守護聖の・・・・。連絡・・・したっけ?」
「えええええっ!?」
オスカーのこの台詞に、場の一同は驚愕の声を上げた。オスカーが、このオスカーがジュリアスを忘れる??そんな馬鹿な!誰が誰を忘れようと、オスカーがジュリアスを忘れるなんて事が。クラヴィスもテディベアも変だが、これが一番変だ!!
「いったい〜〜〜どうしちゃったんですよ〜みんな〜〜〜〜」
ルヴァがその場にへたりこんだ。
《続く》
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