リレー小説『踊るサクリア』15 by 岸田
「お嬢ちゃんは、俺達の味方につくだろう?」
もがくあたしの耳に届いたのは、低く甘いあの素敵な声。そう、オスカー様のものだった。やっぱりこの腕の主はオスカー様。
「み・味方?俺たち?」
しかし声の主がわかったところで、言ってることの意味は全くわからない。
「女王試験でも目下アンジェリークに大差を付けてリードしている、お嬢ちゃんにしては勘が悪いな・・・。お嬢ちゃんは、女王になりたいんだろう?」
炎の守護聖が、少し意地悪な口調で続けた。あたしはかなりムッときた。
そりゃあなりたいわよ。何のために試験受けてると思ってんの?大体、こんな試験受けなくたって、あたしとあんなバカ比べたら100人に100万人があたしのほうが女王に相応しいってわかるわよ。同列に並べられるのだって失礼千万だってのに。
なりたいとかなりたくないとか、そういう問題じゃないのよ。宇宙の危機だっちゅーから急いで試験なんかやってるんでしょ?あんなパープー、女王に据えたら交替したところで崩壊に拍車がかかってアッという間にこの世は終わっちゃうわよ・・。
何だかものすごい怒りが身体の奥底から湧いてきた。何よ、何よ、何なのよっ!!
「あたしがやらないで、どうすんのよっっっっっっっ!!!!!!」
思わず口をついた大声とともに、急に身体の自由が戻ってきた。振り返ると、部屋の隅に鼻血を出しながらうずくまる、オスカー様の姿が。
「すごいぜ、お嬢ちゃん。このオスカー様をふっとばすとは。でもそれでこそだ。
あの方もお喜びになるだろう」
え?あたしがふっとばしたの?んで鼻血出してんの?この男は。みっともねー。
うずくまる男につかつかと近寄り、あたしは一言言った。
「あの方って誰よ」
「一緒に来ればわかるさ。今頃あの呑気者達とご対面しているだろう。さあ、俺の手をとって、ともにあの方のもとへ行こうぜ、お嬢ちゃん」
「お・じょ・う・ちゃん、だぁ〜〜〜〜〜?」
鼻血男の差し出した手を、思いっきり踏みつけた。悲鳴が上がる。
あたしは言ってやった。
「口の聞き方に気を付けなさいよね。・・・・あの方ってのが誰だか知らないけど、いいわ、会ってやろうじゃない。今のあたしは誰にも負ける気がしないっ!」
《続く》
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