リレー小説『踊るサクリア』20 by WON

「ロザリアーーーーーーーっ!」
「ゼフェル様!?」
目を覚ましてくれないオスカー様を腕に、声の方を振り向くと、エアーバイクに乗ったゼフェル様が凄いスピードで走って来ていた。
「後ろに乗れ!!ロザリア!」
「ど、どうされたのです?」
「いいからっ!!走りながら話しすっから!!」
ひどく慌てている様子なのはわかるけど、オスカー様をこのままにはしておけない・・・と思った瞬間だった、アンジェリークがいきなりアタシの腕からオスカー様を奪い、天使のような微笑みを浮かべゆっくりと言った。
「ロザリア、ここは私にまかせて」
その微笑には得体の知れぬ、常人とは異なったサクリアが満々ていた。
背筋を何か冷たいものが走る・・・。
「ロザリア!!早くしろ!!」
ゼフェル様は、硬直しているあたしを、エアーバイクの後ろに乗せ走り出した。
アンジェリークとその腕にしどけなく抱かれているオスカー様の姿が小さくなっていくのを見ながら、あたしは「人魚姫」のワンシーンを思い浮かべていた・・・。


「おい・・・ロザリア・・・あのな」
ボーっとしていたあたしに、ゼフェル様がいつになく低く優しい声で話しかけている。
「実は・・・お前の部屋に・・・・・俺なん・・・」
風が強くてよく聞こえない。アタシはゼフェル様の首元に顔を近づけた。
「わたくしの部屋がどうかしましたの?」
彼は大きく息を吸ったかと思うと、勢いよくアクセルを回し叫んだ。
「お前の部屋にあいつを置いたのは俺なんだよっ!!!」
「はい???????」
よく理解できない。
「だーーーーーっ!!だから!!ブルー・テディをお前の部屋に置いたのは俺だ!」
「何ですってーーーーーーー!?」
「おいっ!危ねえって!」
驚きのあまりエアーバイクから落ちそうになるアタシの腕を引き寄せ、自分の腰にしっかりまわさせながら彼は続けた。
「騒ぎがここまで大きくなったんじゃ、俺の話だけってワケにはいかねえ。だから、みんなんとこ行くぜ。あいつももう捕まってる頃だろ」
「あいつ・・・って誰ですの?」
「オリヴィエだよ。ちっ!俺も馬鹿だったぜ、野郎のためだけだったらあんなことしなかったのによ・・・」
オリヴィエ様が何をしたというの?それに・・・
「他にも・・・いらっしゃるんですか?」
「・・・・・・・」
何も答えないゼフェル様の前方に森の湖が見えてきていた。
 
《続く》


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