エピローグ。
くだんの大騒ぎからいくばくか経った後。
「はぁい、ロザリア!お招きどうもありがとー」
「オリヴィエ様!お待ちしておりましたわ。アンジェリークももう来て待っていますの、どうぞお入りください!」
あたしの言葉に促されてオリヴィエ様が部屋に入ってくる。そしてもう一人、オリヴィエ様の背後に何やら複雑な表情の連れ。
「あら、オスカー様も!いらしてくださったんですの?」
「すまない、勝手に」
「いいえ、大歓迎ですわ!・・・でもどうして?」
謝りたいことがあるんだ、と炎の守護聖はバツが悪そうに言った。
「本当にすまなかった・・・俺が事の次第を聞いたのはあとになってからだが・・・お嬢ちゃんには妙なことばかりしたようで・・・・」
見た目ものすごーく反省してるようだが、その手は速攻あたしの手を握ってくるあたり、どうにも信用ならない。そんなオスカー様を横目にオリヴィエ様が高らかに笑う。
「かっこつけたってダメさ、今更。結局アンタだけだったんだよねーあのコの影響受けちゃったらしいのはさ」
オリヴィエ様はそう言ってブルーテディに目をやった。
そういえばそうだ。「あの方」とか「オレ達の味方」とか言っちゃってホント変だったわ、あの時のオスカー様。日頃の願望が一気に出た、ってことは「あの方(ってのは誰だかわかんないけど)」にジュリアス様に変わって仕切ってもらいたいって願望があったってことなのかしら。でもそんな時でも自分が仕切るってとこにいかないとこがオスカー様っておかしい。根っからの手下体質なのね・・・。
「何笑ってんの?ロザリア」
「あ、なんでもありません、オリヴィエ様、オスカー様。・・・過ぎたことはもう良いですわ」
「な・なんて心が広いんだお嬢ちゃん・・・っ!」
素直に感激するオスカー様に、お茶をサーブしながらアンジェリークが口を挟んだ。
「心が広いっちゅうか・・・単にそれロザリア的にもそこに不都合があるからなんじゃぁ・・・」
「うるさいわねっ、アンタは黙ってお茶入れてればいいのよ!」
「ひどーい。単にじゃんけんに負けたバツなのに・・・あたしロザリアのばあやさんじゃないよ〜」
「ほらほら、喧嘩するとあのコの顔が曇るよ、ロザリア、アンジェ」
オリヴィエが微笑んで仲裁する。
「今日はあのコが元気にやってるかなってそれ見に来た意味もあるんだからさ。どう?その後。上手くやってる?」
「それはもう!」
あたしは笑顔でそれに答えた。
「ルヴァ様がおっしゃるには互いの信頼関係が深まるごとに、このブルーテディはお喋りも流暢になっていくって。もちろん、現段階ではわたくしとブルーテディの間柄は完全とは言えませんけれども、日々・・・」
そう言いかけるあたしの唇に、オリヴィエの人差し指がすっと当てられる。
「はーいはい、そこまでー。まだ直ってないじゃない、アンタの悪い癖。育成じゃないんだ、もっと気楽におやり、ロザリア」
「あ・・・・」
「ま、言うほど心配してないよ。あのコを見ればわかる、ここで楽しくやってることはさ」
「そうだな、それはお嬢ちゃんを見てもわかるぜ?随分表情が柔らかくなった」
「口がきっついのは変わらないけど!」
アンジェリークの悪気はないが水は確実に差してる発言に一同は軽く脱力しつつも、ブルーテディを囲んでの茶会は楽しくすすんでいく。
あの大騒ぎがまるで嘘のような、穏やかな休日の昼下がり。
この飛空都市に女王候補として招かれて随分時が経ったようにも思えるけれど、こんなゆったりとした気持ちで休日を過ごすのは実に初めてのことかもしれない、とあたしは思った。こんな気持ちになれたのも、ブルーテディのおかげなのかしら?
そう思って振り返る。すると、彼は窓の外を一心に見つめていた。
「どうしたの?何が見えるの??」
場の全員がブルーテディの視線の先を追う。
・・・・・そこにはどうやらこの部屋を目指して、悲壮な顔で走ってくる水の守護聖の姿が!!
ちょっと待って!この話これで終わりなんじゃないの〜〜〜??まだ続ける気か、岸田〜〜〜!!!
ロザリア、アンジェ、オリヴィエ、そしてWONまでもがそう思った瞬間、何やらオスカーだけがわかったように腕組みをした。
「きっとリュミエールもアンジェリークから現代女子高生の実態を聞いて、続きが聞きたくなったんだな・・・」
違うって!!!
プラス岸田のツッコミが思いっきりオスカーに炸裂するなか、なんと恐るべきことに
「踊るサクリア」は
「踊るサクリア2」に続くのであった・・・・・おいおいおいおいおいおい!!
とりあえず完(笑)。
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