与えられた猶予は3ヶ月(月イチ連載でストックが3話だから)。しかしここでも「ギリギリまで腰を上げない」私の性格は思いっきり発揮され。ストックなんて甘やかしこそすれ効果は何も無かった(<オマエ…)。
とりあえず連載を落とすのだけはいかんという意識のもと、7話くらいまでは漠然とした考えしかないまま書くだけ書いて後は棚上げ。しかし物事なるようになるものです、丁度、世紀末のクリスマスの頃、急に…がばと腰が上がったのでした。理由については公私共々いろいろありすぎて到底書きようがない(自分でもコレって言えないし…)ので割愛しますが、とにかく急に見通しがついた。
年末年始は仕事もお休み、今しかない!!とりあえずのプロットをつくり、それにそって原稿を書く日々。書いて書いて書きまくり、書いてはWONに送りつけ。さすがに一年近くもあっためるだけあっためていたネタ、放出が始まったが最後、自分でも止められぬ勢い。なのに………なんでこの話、こんなに“終わらない”んだぁああああ!!!!
いやもう本気で絶叫しました。全然書きたいシーンにたどりつかない、どころか予定通りに話が進まない。プロットはできているのです、この道筋に添っていけばラストまで行くはずなのに。どうして??
謎の答えは簡単。そう…中堅御三方は…キシダの言うことなんか聞きゃぁしねえ方々だったのです。「俺はそんな風には言わないな」「ここのワタシの行動ちょっとヘンじゃない?」「私は…(きっと長いので以下略)」そんな幻聴が、私の耳にリフレイン。待て待てぃ!私がこの状態になるまでどれだけかかったと思ってんだ、少しは黙っててくれい…っ!
今回キシダも切羽詰まりようが他の時とは違った、いかに中堅の皆様の主張でも、いちいち耳を傾けているヒマは。そう思って強引に振り切る。振り切った結果…
「……何か違う……」(<出たよ、またコレが)
“話”にはなってます、つじつまも合っているんだろう。しかしこれだけやって「…この話…面白いワケ?」。私が当初思っていたのとは何かが違う。あと2話くらい書けば終わる小説を目の前に、ぴたりと私の手は止まってしまったのであります。(ちなみにこの段階では、もうどーにもフォローできないような深刻かつのっぴきならない状況に御三方は陥っていて、これでは迎えるべくラストで守護聖辞職願いを書いて三人肩寄せ合って聖地を去らねば状態ってなシリアスっぷりでした)。
私が手が止まってすることといったら決まってます、さあWONに愚痴の電話(おいおい(^^;)。
自慢じゃないが私は根が暗い。「こんな話、表に出してわざわざ読んでもらうほどのもんじゃ無いんじゃないのかなぁ」などと延々愚痴る愚痴る。だがそんなこと言われたってまだオチも知らされていないWONにはわからんし、何も言いようがないワケです。
「キシダが書きたいと思った話ならどんなんでも違わないんじゃ?」「いや、書きたいと思って書いたのは間違いないんだけど、何か違うんだよコレは」「何が、どこが」「それがわかれば…っ!」
連載を始めようと言いだし、勝手に人が最も忙しいような時期にオノレに火をつけ、WONのミレニアムさえステキなものにしていながら、この言いぐさ。私なら殴ります。いやWONも殴りたかっただろう、単に側にいなかったからそれが叶わなかっただけで。
…こんな不毛な会話のあと、彼女がぽつりと「ひとつだけ言えば…その後の展開を考えると、リュミちゃんが投げたフライパンのシーン、ちょっと浮いてるよね」
…む…言われてみれば確かに。……そうだ!そこだよ!!
この時期の私は話を“終わらせる”ことばかり考えていたので、そんな昔の事(ちなみに6話)はすっかり忘れておったのです。途中どんな展開になろうが結局最後にはツッコミひとつで結果オーライ、私が書きたいのはそんな中堅だったはず!違うでしょう、何で今こんなに皆様眉間に皺よせてんのよ〜〜〜。
いったいどこをどう間違ったのか。ここからは既に二人の共同作業。検証の結果…8話あたりからどうにもアヤシイ。ここの、リュミだーーー!(いや、間違えていたのは私で、けしてリュミ様のせいではないんです…っ)
この段階でのリュミは、ネリーさんの傷を見てあまりにも深刻に悩んでいた。ここで急に登場した「なんちゃってSF」的要素が暗雲となって一気に物語を不穏な空気で支配してしまったのでした。(既に20話近く進んでいたこの話、8話から暗かったら後はおして知るべし、です)。
大きく変える必要はない、ここでもう少しだけリュミが軽くこの事態を受け止めれば、それだけで未来は変わる。私とWONは二人して、ああでもないこうでもないと「直し」作業にとりかかりました(まさしく“リスタート”。…今、自分で言って遠い目になっちゃった…(T-T))。
だが、これが言うほど楽じゃなかった。何せ長い。「せっかく連載、大げさな設定のおおざっぱな話でパーッと!」と思って体育館いっぱい敷いた大風呂敷を、一ミリ画で見直すようなもの。一人が考え方を変えれば他の人達だって変わる。台詞も行動も芋蔓式にどんどん変わる。変わればそれ以前の決定稿部分にも修正が出る。三歩進んで二歩下がるを地で行く作業。
新世紀を迎え盛り上がる世間様に逆らうよーに、日夜二人は到底人にも言えないようなことに必死になっていたのでありました。誰だ、こんなめんどくせー話考えたのはっ!おめえだおめえ!!そうだけど、すでに引き返すにはいかんのよ〜〜WONちゃんごめんよ〜〜!もういい、乗りかかった船だーー!
羽田空港の『Royal Deli』(<キシダの気に入り(笑))で、時間寸前までふたりでそんな絶叫しつつも、楽しい作業ではあったよーな気がします。しょせん、特級中堅馬鹿。