ひとしきりの話し合いの後、庭にはオスカー、オリヴィエ、リュミエールの3人だけが残った。すっかり日は傾いて、空は美しく朱に染まっている。
「はは、それにしてもおっかしかったねえ、お子さま達。気の毒なくらいがっかりしてたよ」 オリヴィエは思いだし笑いを堪えながら言った。リュミエールはテーブルの上のカップをワゴンに片づけながら、いささか困惑しながらも微笑む。 「私とオリヴィエの会話を勘違いしていたなど。そのような事、起こり得るはず無いというのに・・・」 「ま、アイツらも生意気にそういう年頃だってことだ。ま、今度少しは外に連れ出してやるか」 カップの底に残った少しばかりのカプチーノを慌てて一飲みしてから、オスカーも笑う。たしなめるような口調の水の守護聖。 「またそのような。年かさの者として、指し示すべき姿勢自体が間違っています」 「大体、アンタとナンパに行ったって、真っ先に消えるの目に見えてるじゃない。何の役にも立ちゃしないね、断言!!」 からかうオリヴィエを軽く睨むオスカー。 「まったく・・・お前等と出会ったのがこの聖地で良かったぜ。お互い守護聖なんて枷でもなけりゃ、事と次第によっちゃ、ぶん殴ってる」 「はっは、一人の女取り合ったりして?」 オリヴィエは投げ出されたくだんの台本を指ではじいた。 「同じ女性を好きになることなど、こうまで個性の違う私達にはあり得ないことのようにも思えますが」 「そりゃわからないぜ?リュミエール。誰にとっても魅力的な、スペシャルなレディが今後現れないとも限らない」 「考えたくありませんね、あまり。・・・とくにあなたは相手の気持ちなどおかまいなしに強引な行動に出そうで」 「あ〜ら、そういうとき一番強引なのって、案外リュミちゃんって感じ!」 「それは言えてるな、お優しい顔して取り入るんだ。見えるようだぜ、その手口」 「失礼な」 彼はそれだけ言って、ワゴンを押しながら廷内へ消えていった。 「短気だよねえ、リュミちゃんてば。やっぱリュミちゃんといざこざするのはゴメンだね。もちろんアンタとも、だけど」 「・・・よく意味がわからないね〜え。じゃ、リュミちゃんによろしく」 (終) |